区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

第1期くらしのエネルギー・スキルアップ講座

第1回講座レポート

基調講演「地球温暖化リスクと私たちの選択」

江守 正多(えもり せいた)氏

説明「今後の事業の進め方」

ねり☆エコ 沼田 美穂 委員

説明「エネルギーの見える化ツールのご紹介~でんき家計簿の活用方法」

ねり☆エコ 東京電力 河村 英敏 委員

説明「エネルギーの見える化ツールのご紹介~my Tokyo Gasの活用方法」

ねり☆エコ 東京ガス 江部 由美子 委員

説明「家電の計測~ワットモニターの活用法」※扇風機を測定

ねり☆エコ 沼田 美穂 委員

開催日時:平成27年7月17日(金)9時55分~12時
開催場所:練馬センタービル 3階会議室

基調講演「地球温暖化リスクと私たちの選択」

講師:国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室室長
江守 正多 氏

 この連続講座は、今回が初回で、この後エネルギーに関する内容を学ばれていくと聞いていますが、私からは、今、“地球温暖化”がどうなっているかという全体像をお話しいたします。私は、2年前に「異常気象と人類の選択」という本を出しました。“人類の選択”とは大げさに聞こえるかも知れませんが、私は今がその重要な時だと思っており、今日は皆さんにそれを伝えたいと、思っています。

映像「2050年9月の天気予報」視聴

地球温暖化のしくみ

 地球は太陽からエネルギーをもらって、一部跳ね返し、7割くらい吸収します。地球は同時に、宇宙に向かって赤外線というかたちでエネルギーを放出しています。地球が太陽からもらうエネルギーと、宇宙に放出するエネルギーは、大体釣り合っています。もし地球の温室効果が全くなければ、地面からの赤外線がどんどん宇宙に抜けていき、地球の温度は-19℃くらいになります。実際には、地球には大気があり、何種類かの温室効果ガスを持っています。一番量が多いのは水蒸気ですが、これは自然のしくみで増減します。人間が増やしている温室効果ガスで一番多いのは、二酸化炭素(CO2)です。

 太陽からの光は温室効果ガスを素通りして地面に入ってきます。地面から出て行く赤外線は宇宙に放出されますが、一部を温室効果ガスが吸収します。地面から見ると、大気から戻ってくる分の赤外線を余分にもらうことになります。その結果、地面付近の温度は14℃程度になっています。前の氷河期が終わってから1万年くらい、地球はその温度で安定していて、我々はその上に文明を築いてきました。ところが大気中の温室効果ガスが増えることにより、大気の温室効果が強まり、地面から出てくる赤外線がたくさん吸収されるようになりました。それで温度が上がっている状態というのが、地球温暖化です。

IPCCについて

 今日は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が出した最新の報告書に基づいて話します 。また、これから「地球温暖化」「気候変動」といった言葉を使いますが、それは同じ意味だと思ってください。

 はじめにIPCCについてですが、気候変動について何が科学的にどれくらいわかっているか、何がわかっていないのか等を評価する機関です。主体は、各国政府です。政府は、どんな報告書をどういう手順で作ろうか決め、依頼された科学者が報告書の原稿を書きます。その原稿の要約を各国政府が集まったところで一文、一文、承認して報告書ができます。つまり各国政府の承認のもとにできた報告書で、これがスタンダードになります。そのため、世界が温暖化についての政策等を議論するとき、この報告書の内容を無視することはできません。

第5次評価報告書の内容

 大気中の二酸化炭素は、1958年頃からハワイの山の上と南極で直接的な観測がはじまりました。グラフのように、開始時は310ppmくらいですが、現在400ppmを超えました。人類が大気中にCO2を放出し続けてきたからです。

 次は、過去150年くらいの世界の気温のデータですが、これは世界中の温度データを集め、世界平均ではどのくらいかを推計したものです。不規則に変化していますが、長期的には上昇していて、特にここ100年は急に上がっています。ただ、気温はCO2だけが原因でなく、自然のしくみでも揺らぎます。実は最近の気温は、あまり上がっていなかたのですが、去年今年とまた上がってきました。そのように変動はありますが、長期的に見ると1℃弱、明らかに上がっていることがわかります。

 夏の一番少ない季節の北極海の海氷面積の記録を見ると、1950年くらいからはっきり減って来ており、100年前の半分くらいになっています。

 最後の海面水位は、ほぼ単調に19cmくらい上昇しています。ただ、北極海の氷がとけても氷は水より軽いため浮いているので 、海面は上がりません。海面上昇は、海水の熱膨張、つまり海水が温まり膨らんで体積が増えることと、陸の上の氷がとけて海に流れ込むという2つの原因で起きています。

 IPCCは、2013年の報告書で「20世紀半ば以降の世界平均気温上昇の半分以上は、人為起源の要因による可能性が極めて高い(95%以上)」と言っています。

 グラフは、過去100年間に観察された世界平均気温の長期的傾向を黒い線で示し、シミュレーョン結果を赤色と青色で示したものです。その際、青色の部分は、太陽活動の変動や火山活動等の自然要因だけを考慮したシミュレーョンで、もう一方の赤色の部分は、 CO2やそのほかの大気汚染物質などの人為的な要因を加えたものです。両者を比較すると、青色の自然の要因だけでは最近の気温上昇が再現されません。

 つまり実際に観測された温度からみても、人間活動によって温室効果ガスを大気に放出した分だけ、温度が上がる要因を地球に与えたことがわかります。人間活動を考えないと最近の温度上昇は説明できないのです。

 将来予測は、我々が今後どのくらい温室効果ガスを出すか決まっていないので、社会の発展の仕方やどれくらい排出削減の対策をするのか等で異なります。今回の報告書では4つのケースに分けてシミュレーョンをしました。人口も増えて対策もしないのが一番高いケースで、 2100年に“4℃前後”現在と比べて温度が上ります。“前後”の幅は、科学的な予測の幅です。今の科学では、ピタリと当てる精度はないのですね。

 目一杯対策をしたときは、 2050年くらいに上昇が止まります。あとは横ばいです。もちろん、幅はあります。

映像「20~21世紀の地表気温変化シミュレーョン」視聴

 赤が温度が上がる場所、青が下がる場所です。色がゆらゆら変化していますが、これが自然の変動です。時間が進んでいくと、北極海のあたりから赤くなっていきます。氷が減って、温暖化が増幅されるので最初に赤くなり始めて、全体が赤くなったときには、黄色くなっています。黄色は赤よりも温度が高く、6℃、8℃と温度が上がるところです。北極海を除くと、海は陸よりも温度は上がりにくいです。地域でも温度差があり、2100年には、地球全体で平均4℃前後、温度が上昇していますが、内陸の高緯度はもっと高く、10℃く らい上がっているところもあります 。日本は周りが海で中緯度なため、マイルドです。 世界平均よりちょっと高いくらいです。

映像「20~21世紀の降水量変化シミュレーョン」視聴

 まず青色が増えるところ 、赤色は減えるところを示します。気候帯によって降水量は違いますが、もともと平均的に降っている量を基準として、相対的に何%増えたか、減ったかで色を付けています。ゆらゆらと変動していますが、熱帯太平洋でときどき青く出るのがエルニーニョ、赤く出るのがラニーニャの年です。温暖化が進むと中高緯度や熱帯湿潤域は青く、降水量が多くなります。亜熱帯は赤いです。もともと降りやすいところはさらに多く降り、砂漠など雨が降りにくいところはさらに降らないとう傾向が強まることが予測されています。

海面の上昇

 4つのシナリオで世界平均の海面水位を見たグラフです。これから対策を全くしないシナリオだと、海面水位の傾きは加速していきます。2100年には、60~90cmくらい海面が上昇します。

 一方、対策をした場合、気温は2050年で止まると説明しましたが、海面は上昇が続き、2100年で40cm前後上昇します。その理由は、気温の上昇は止まっても、海は熱を吸収し続けるからです。

 吸収された熱はじわじわと深いころまで浸透し、海水を膨張させます。海面上昇は“慣性が大きい”といいますが、すぐに止まりません。何百年かけてやっと止まります。

異常気象

  報告書では極端現象と言っていますが、もともと温暖化がなくても昔から自然の中でたまに起こります。そのため、個々の異常気象を温暖化と因果関係を結びつけるのは難しいですが、“長期的な傾向”は、わかります。 数十年、百年の気象データがあれば、過去と比べて異常気象が増えているかどうか、統計的に調べられます。

 まず、 寒い日が減って暑い日が増えています 。先程も説明しましたが、その理由に人間活動があったという可能性は非常に高いです。でも最近、大雪の日も多いじゃないかという人がいますが、過渡的な現象として、寒い日も多いことがここ数年起きています。ただ長期的には、平均気温が上がって行く効果の方が勝りますので、極端に寒い日は減っていくのでないかと理解していただいていいと思います。

 大雨の頻度は増えています。温暖化で空気中の水蒸気が増えますので、低気圧が来た時に大気中に水蒸気が多い分、割増しで雨が降ります。人間活動の影響があったかについては、まだはっきり言えないのですが、将来は先程の映像の通り、もともと雨が降りやすい中緯度と熱帯湿潤域で、大雨が増える可能性が高くなります。

 干ばつや強い熱帯低気圧の増加についても、過去については質の高いデータがなくてはっきりとは言えないのですが、それぞ将来について可能性は高い、どちらかといえば高いと予測されています。

温暖化のリスク

 こうした異常気象、温度上昇、海面上昇等が、われわれの社会や他の生物へ及ぼす、リスクがあることが心配されています。

 「海面上昇」は、砂浜が浸食したり、淡水に海水が混ざりやすくなったり、大雨が降ると洪水が起こりやすくなります。そうなると、御存じのツバルなど、標高の低い島は国土が縮小したります。

 「洪水」は、先程お話したように、大雨が増えるためリスクが増加します。

 「台風」は、とても強い風の影響というこも含め、特に都市部に直撃すると、電気や水道、交通などのインフラに重大なダメージを与えるリスクがあります。

 「熱波」は、熱中症のような健康被害等リスクが増えます。

 「食料不足」は、高温障害など作物の生産性が落ちます。場所によっては、干ばつが頻発したりして、食料生産 が大きく下がります。

 「水不足」は、降水量が減る地域や、温暖化で水分の蒸発が増えて生活に必要な水が不足する地域が出ます。

 「海、陸の生態系の損失」は、もともと人工物によって直接の破壊、分断、汚染などもありますし、他の地域の生物を人間が連れて来て在来種に影響を与えたりといった他の原因もある上で、温暖化が進むと、気候帯の移動の問題があります。その生きものにちょうどいい生息場所が移動してしまって、それについてけない生きものは、個体数が減り、絶滅してしまう、そういういストレがかかります。

 また今日のスライドにはありませんが、こういう風に気候が変化した時に、新しい気候に合うよう、生活の仕方を変えたり、社会のシステムを変える、例えば、食料の生産性が下がったら品種改良をする、別のものを作る、大雨が増えれば防災対策を強化する、そういう「適応策」を考えることも、大変重要です。

 最近、世界ではそうした「適応策」の計画を立てて進めようとしています。日本もこの夏、国として適応計画を発表し、各自治体がそれに合わせた備えなどを行う予定です。

映像「“対策なし”と“2℃以内のケース”の気温変化シミュレーョン」視聴

 対策をした時としない時の差は、2040年くらいからはっきりしていきます。2100年になるとこんなにも違うのですが、問題は、今、一生懸命、対策を行っても効果が出るのが来年、再来年と言うことでなく、かなり先になるということです。しかし、今から対策を行わないと間に合わない。我々はそれでも、対策をはじめられるのかを試されているといえます。

2℃以内に抑えるために

 先程から「目一杯対策をしたら」と言っていますが、世界平均の気温上昇を2℃以内に抑えるためには、世界全体のCO2の排出量を今世紀中にほぼゼロしなければならない、そういう世の中を作っていかなければならないのです。これは並大抵なことではないのですが、それでもしなければならない、世界の目標になっています。

 その実現のためには、これから皆さんがお考えになる日々の「省エネ」みたいなこともありますし、機器の改良、効率の改善などによってエネルギー量を削減することも必要です。また太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーの利用も重要です。原子力については、日本では事故があったばかりで議論があるところですが、選択肢としてはあります。

 また、化石燃料を使う場合はCCS(Carbon dioxide Capture & Storage)技術で、二酸化炭素は大気に出さず地中に貯留することなどをやっていかなければならないと思います。

 温暖化は放っておくといろいろなリスクがあると言いましたが、温暖化を止める対策にもリスクがいろいろあります。しかし、リスクがあるならば「両方嫌だ!」というのは許されない。そが冒頭にお話した「人類の選択」の時ということです。温暖化が進んだときの影響には、例えば「寒いところはちょっと暖かくなってもいい」「北極海の海氷が消滅したら、船が通りやすくなる、資源も採れる」といった“いいこと”もあります。

 一方で、急激な対策を行うと「コストがかる」「原発使用を選んだらそれによって生じるリスクもある」といった心配事があります。しかし、対策をおこなうことで温暖化を止めることだけでなく、副次的“いいこと”もあります。「省エネになる」、再生可能エネルギーが増えれば外国から化石燃料をたくさん買うこともなくて「エネルギー自給率が高まる」「大気汚染を抑制する」などの“いいこと” です。

 また、どの影響を受けるかは、主体によって違います。温暖化で、海面上昇で国土がなくっなてしまう国もあるし、今寒いところは暖かくなった方がいと思う。また、対策がビジネスチャンスになる業界もあるし、二酸化炭素の排出に税金がかかったら、つぶれてしまうというところもあります。そのようなさまざまな利害がある中で 、人類全体で何らかの方向性を見つけて、進んでいかなければならないのです。

 今年12月には、パリでCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)があり、世界全体で2℃を目標に、各国でそれぞれ目標を決めて温室効果ガスの排出を抑制しようとしています。日本は、2013年を基準として2030年までに26%削減する目標を国連に、昨日提出しまた。今年は、そのように各国が目標をどういう風に守っていこうか決める節目でもあります。これから世界がどういう約束をするのか、日本の目標が世界でどう評価され、どう日本のエネルギー政策に反映されていくのか、ぜひそちらの問題も注目し、一緒に考えていただきたいと思います。

質疑応答

Q:海面上昇の原因に「熱膨張」があることを知らなかった。どのような原理なのか?

A:水は、水温が4℃の時に最高の密度となり、温度が上昇すると下がっていきます。液体の中では分子が運動していますが、温度が上がれば運動が活発になり、分子間の距離が開いて体積が増えるということは、科学的にわかっています。

Q:COP21で目標を決めるというが、それは守らなくてもいい“努力目標”なのか。

A:京都議定書の目標は罰則がありましたが、国際条約は「抜ける」と言えば、罰則なしで脱退できますし、アメリカは最初から批准しませんでした。今回どのくらい強制力があるか決まっていませんが、強制力が強すぎると、皆抜けてしまうので難しいところです。

Q:中国は最大の排出だが、どう取り組んでいるか?

A:温暖化対策にも力を入れていますが、経済成長を制限することはしたくない、というのはどの途上国にも共通していることです。中国は、2030年には排出量をピークにする目標を立てており、それに向けて再生可能エネルギーの導入が非常に進んでいます。私は守れない目標ではないと思います。

配付資料等

説明「今後の事業の進め方」

ねり☆エコ 沼田 美穂 委員


ねり☆エコ委員 沼田 美穂 委員

配付資料等

説明「エネルギーの見える化ツールのご紹介~でんき家計簿の活用方法」

ねり☆エコ
東京電力 河村 英敏 委員


ねり☆エコ 河村 英敏 委員

配付資料等

説明「エネルギーの見える化ツールのご紹介~my Tokyo Gasの活用方法」

ねり☆エコ
東京ガス 江部 由美子 委員


ねり☆エコ 江部 由美子 委員

配付資料等

説明「家電の計測~ワットモニターの活用法」※扇風機を測定

ねり☆エコ 沼田 美穂 委員

配付資料等

参加者アンケート結果から

基調講演について

  • 限られた時間で基本的知識、問題点がコンパクトにまとめられて講義され、よくわかった。初回の関心・知識を得るよい話だったと思います。
  • 実際の観測結果とシミュレーョンの対比、図等を用いて短時間でわかりやすく大枠の事を説明してもらえた。
  • 知らない事が多すぎてカルチャーショックを受けた。 今後受講して理解を深めたい。
  • 未来の地球に対して何となくは感じていたが、しっかり対策を取らねばならない事を感じた。

その他について

  • ネットの家計簿、ワットモニター ぜひ使ってみます。
  • 日常のことながら見すごしがちな内容で、楽しみにしています。
  • (マイクが使えないため)説明者の声が聞きとりにくかった。