区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

IPCC(専門家)による報告書

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovermental Panel on Climate Change)は、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が共同で1988年(昭和63年)に設立した機関で、日本を含む195か国が参加しています。

 地球温暖化に関する科学的な研究成果の評価や、温暖化の影響と対策などの研究を行い、総会の受諾を経た報告書を発表し、政策の科学的基礎を提供しています。

 第5次評価報告書(AR5)は、各国から選出された科学者約800人が執筆し、2,000人を超える科学者や多くの各国政府関係者による検討を経てとりまとめられました。

 第6次評価報告書(AR6)も世界中の多くの科学者・政府関係者により検討され、2021 年(令和3年)8月の第1分科会報告書(WG1)、2022 年(令和4年)2月の第2分科会報告書(WG2)、同年4月に第3分科会報告書(WG3)がとりまとめられ、2023年(令和5年)3月に、統合報告書(SYR)が発表されました。

 これまでの各報告の概要を見てみましょう。


IPCC第38回総会及び第2作業部会第10回会合
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより

IPCC第1次評価報告書(FAR 1990年)

 人間活動が起源の温室効果ガスがこのまま大気中に排出され続ければ、生態系や人類に重大な影響を及ぼす気候変化が生じる恐れがあります。世界の平均気温は、過去100年で0.3~0.6℃、世界の平均海面水位は10~20cm上昇しました。また、21世紀末までに平均気温が3℃、平均海面水位が65㎝上昇すると予測されました。

IPCC第2次評価報告書(SAR 1995年)

 人間活動の影響による気候変動は取り返しのつかない状況であり、世界の平均気温は1901~2000年で0.45℃上昇しました。また、今後100年(特段の対策がとられない場合)で平均気温が0.9~3.5℃上昇、世界の平均海面水位が15~95㎝上昇し、極端な高温等の気候変化があると予測されました。このように予測された地球温暖化の進行を止めるには、温室効果ガスの排出量を1990年の水準を下回るまで削減する必要があると指摘しました。

IPCC第3次評価報告書(TAR 2001年)

 人間活動が、過去に例をみない気温上昇の原因である可能性が高く(66%以上)、その緩和策が重要であり総合的な対策の推進が効果的であることを指摘しました。世界の平均気温は1901~2000年で0.2~0.8℃上昇しました。また、世界の平均海面水位は0.1~0.2m上昇しました。また、21世紀末までに平均気温は1.4~5.8℃、平均海面水位は0.09~0.88m上昇すると予測されました。

IPCC第4次評価報告書(AR4 2007年)

 20世紀半ば以降の温暖化のほとんどは、人間活動が起源となる温室効果ガス濃度の増加による可能性が非常に高く(90%以上)、温暖化には疑う余地がない。温室効果ガス濃度を安定化させるには、2050年までにCO2排出量を2000年比50~85%削減しなければならないと指摘しました。世界の平均気温は1906~2005年で0.56~0.92℃上昇、世界の平均海面水位は、20世紀中に0.17m上昇しました。21世紀末までに平均気温は1.1~6.4℃、平均海面水位は0.18~0.59m上昇すると予測されました。

IPCC第5次評価報告書(AR5 2014年)

 地球温暖化について“人間活動による温室効果ガスの増加”が主な要因と警告し、産業革命前から2℃までの気温上昇に抑えるよう指摘しました。

 世界の平均気温は、1880-2012年の間で0.85℃上昇し、今世紀末には1986-2005年と比較して0.3~4.8℃上昇すると予測。世界の平均海面水位は、1901-2010年の間で0.19m上昇し、今世紀末には1986-2005 年と比較して0.26~0.82m上昇すると予測しました。気温上昇を2℃までに抑えるためには、世界の温室効果ガス排出量を2100年にはゼロかマイナスまで減らす必要性があります。

→詳しくは、「気候変動の科学的知見」(環境省)をご覧ください。

IPCC1.5℃特別報告書

IPCC が【1.5℃特別報告書】を発表

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第48回総会が、2018年(平成30年)10月1日から6日にかけて仁川(韓国)において開催され、IPCC1.5℃特別報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、報告書本編が受諾されました。

 2015年のCOP21において、産業革命前からの世界の平均地上気温上昇を2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を追求するパリ協定が採択されましたが、同時にIPCCに対して、この特別報告書を2018年に提出するよう求めていました。

 3年間の新たな知見を踏まえ、気候変動の脅威への世界的な対応の強化と、持続可能な発展及び貧困撲滅への努力のなかで、1.5℃の気温上昇にかかる影響やリスク及びそれに対する適応、関連する排出経路、温室効果ガスの削減(緩和)等に関する特別報告書となっています。

1.5℃の地球温暖化

 人間活動は、工業化以前の水準よりも約1.0℃温暖化させたと推定しました。温室効果ガスが現在の進行速度で増加し続けると、2030年から2052年の間に1.5℃に達する可能性が高いと予測されました。

 世界の平均地上気温の1.5℃上昇の影響と比べ、2℃上昇では人間が居住するほとんどの地域における極端な高温が増加します。世界の平均海面水位の上昇でリスクに曝される人口は最大1千万人増加します。夏季における北極の海氷の消滅が、1.5℃だと100年に1回程度ですが、2℃では10年に1回程度に増加します。このように地域的な気候特性に明確な違いがあると予測されました。

 将来の地上平均気温上昇が1.5℃を大きく超えない(排出経路)予測では、世界全体の人間活動が起源のCO2排出量が2010年に比べ2030年までに約45%減少し、2050年前後に正味ゼロになる。このためには、エネルギー、土地、都市および運輸と建物を含むインフラ、産業システムにおける急速かつ広範囲におよぶ移行が必要となると予測されました。

 パリ協定に基づき各国が提出した目標による2030年の排出量では、1.5℃に抑えることはできません。しかし、2030年よりも十分前に、CO2排出量が減少し始めることによってのみ1.5℃に抑えることができます。このためには、持続可能な開発および貧困撲滅への世界全体の対応強化などが必要と予測されました。

出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「1.5℃特別報告書(*)」の公表(第48回総会の結果)について(環境省)1.5℃特別報告書の要点【2020年3月】(環境省)より

IPCC方法論報告書

IPCC が【2019年方法論報告書】を発表

 IPCCは、2019年(令和元年)5月12日京都で行われた総会で「2019年方法論報告書」を発表しました。各国が温室効果ガスの排出量・吸収量の報告を行うために、算定方法や算定に必要な各種係数を提供するガイドラインを改良したものです。これにより、基準年の値や過去の推計値などの精度が改善され、数値の見直しが行われています。

出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「2019年方法論報告書」の公表(第49回総会の結果)について(環境省)より

IPCC土地関係特別報告書

IPCCが【土地関係特別報告書】を発表

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第50回総会が、2019年(令和元年)8月2日から7日にかけてジュネーブ(スイス)において開催され、「土地関係特別報告書」の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、報告書本編が受諾されました。

 IPCCは、2016年4月の総会で「土地関係特別報告書」を作成することを決定していました。陸域生態系における温室効果ガスの流れ、気候への適応及び緩和、砂漠化、食糧安全保障などに関連する持続可能な土地管理などに関する科学的知見を評価するものです。

気候変動と土地

 工業化以前に比べ、陸域の平均気温は1.53℃上昇していて、世界の地上平均気温(陸域+海域=0.87℃上昇)の2倍近く上昇しています。重要な資源である土地は人間活動と気候変動で打撃を受けやすくなり、人間の健康、生態系、砂漠化、食料の値上がりや食料安全保障への影響も危惧されています。

 食品ロスの削減など、食料システム全体にわたる政策は、より持続可能な土地利用管理、食料安全保障の強化に役立ち、温室効果ガスの排出削減にも有効と予測されました。また、肥料の管理、暑さや干ばつに強い品種の利用、家畜排せつ物管理など、当面の対策も有効と予測されました。

出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「土地関係特別報告書(*)」の公表(第50回総会の結果)について(環境省)環境展望 海外ニュース「気候変動に関する政府間パネル、土地関係特別報告書を承認」(国立環境研究所)土地関係特別報告書の要点【2020年3月】(環境省)より

IPCC海洋・雪氷圏特別報告書

IPCCが【海洋・雪氷圏特別報告書】を発表

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第51回総会が、2019年(令和元年)9月20日から24日にかけてモナコ公国において開催され、「海洋・雪氷圏特別報告書」の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、報告書本編が受諾されました。

 IPCCは、2016年4月の総会で「海洋・雪氷圏特別報告書」を作成することを決定していました。海洋・雪氷圏に関する過去・現在・将来の変化、並びに高山地域、極域、沿岸域、低平な島嶼及び外洋における影響(海面水位の上昇、極端現象及び急激な現象等)に関する科学的文献を評価するものです。

気候変動と海洋・雪氷圏

 雪氷圏が狭くなり、氷床や氷河の減少、北極の海氷の減少、永久凍土の温度上昇などが見られ、世界の平均海面水位は、1902年から2015年で0.16m上昇しました。近年は、急上昇が観測されています。

 海面水位の2100年の予測では、第5次評価報告書より10cm上方修正し、数百年単位では数メートル上昇すると予測しました。また、2100年までに、海洋生物の量が減少するとともに、世界の沿岸湿地の20-90%が消失すると予測しました。

 適応による対応は、今後ますます困難になります。各国間の調整、データ・知識の共有、資金の確保など、様々な面で世界の協力・支援が重要です。

出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「海洋・雪氷圏特別報告書(*)」の公表(第51回総会の結果)について(環境省)海洋・雪氷圏関係特別報告書の要点【2020年3月】(環境省)より

IPCC 第6次評価報告書

IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書(AR6 WG1 2021年8月)

 2021年(令和3年)8月、IPCC「第6次評価報告書」の一部となる第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の政策決定者向け要約(SPM)が発表されました。

 「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」「向こう数十年の間に、温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に地球温暖化は1.5℃及び2℃を超える。」など、最新の知見を報告しました。

 工業化以前と比べた2011年から2020年の世界の平均気温は約1.09℃上昇し、工業化以前と比べた2081年から2100年の平均気温は、1.0~5.7℃上昇と予測。1901年から2018年に世界の平均海面水位は0.20m上昇し、1995年から2014年と比べて、2100年までに0.22m~1.01m上昇と予測しています。

→詳しくは「IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書」(環境省)をご覧ください。

IPCC 第6次評価報告書第2作業部会報告書(AR6 WG2 2022年2月)

 2022年(令和4年)2月、IPCC「第6次評価報告書」の一部となる第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)の政策決定者向け要約(SPM)が承認され、本文が受諾されました。

 報告書では、観測された影響及び予測されるリスク、適応策と可能にする条件、気候にレジリエントな開発について、最新の科学的知見に基づき、報告されています。発表された SPM から一部を抜粋します。

観測された影響及び予測されるリスク

  • 人為起源の気候変動は、極端現象の頻度と強度の増加を伴い、自然と人間に対して、広範囲にわたる悪影響と、それに関連した損失と損害を、自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている。
  • 気候変動に対する脆弱性は、地域間及び地域内で大幅に異なる。約 33~36 億人が気候変動に対して非常に脆弱な状況下で生活している。
  • 地球温暖化を 1.5℃付近に抑えるような短期的な対策は、より高い水準の温暖化に比べて、損失と損害を大幅に低減させるが、全てを無くすることはできない。
  • 次の数十年間またはそれ以降に、一時的に 1.5℃を超える場合、1.5℃に留まる場合と比べて、多くの人間と自然のシステムが深刻なリスクに追加的に直面する。一部の影響は地球温暖化が低減されたとしても不可逆的となる。

 なお、過去の報告書では下記のように報告されていました。

  • 第3次報告書(2001年):近年の地域的な気候変化、特に気温の上昇は既に多くの物理・生物システムに対して影響を及ぼしている。
  • 第4次報告書(2007年):すべての大陸及びほとんどの海洋で観測によって得られた証拠は、多くの自然システムが、地域的な気候変動、とりわけ気温上昇の影響を受けつつあることを示している。
  • 第5次報告書(2014年):ここ数十年で、全ての大陸と海洋において、気候変化が自然及び人間システムに対して影響を引き起こしている。

適応策と可能にする条件

  • 適応の多くのイニシアチブは、即時的かつ短期的な気候リスクの低減を優先しており、その結果、変革的な適応の機会を減らしている。
  • 人間の適応には、限界に達しているものもあるが、主として財政面、ガバナンス、制度面及び政策面の制約に対処することによって克服しうる。

気候にレジリエントな開発

  • 気候にレジリエントな開発は、政府、市民社会及び民間部門が、リスクの低減、均衡性及び正義を優先する包括的な開発を選択するとき、そして意思決定プロセス、ファイナンス及び対策が複数のガバナンスのレベルにわたって統合されるときに可能となる。
  • 短期のうちに地球温暖化が 1.5℃を超えた場合には、気候にレジリエントな開発の見込みがますます限定的となる。

→詳しくは、「IPCC 第6次評価報告書第2作業部会報告書」(環境省)をご覧ください。

IPCC 第6次評価報告書第3作業部会報告書(AR6 WG3 2022年4月)

 2022年(令和4年)4月、IPCC「第6次評価報告書」の一部となる第3作業会報告書(気候変動の緩和)の政策決定者向け要約(SPM)が承認され、本文が受諾されました。

 報告書では、「最近の開発と現在のトレンド」、「地球温暖化抑制のためのシステム変革」、「緩和、適応、持続可能な開発の連携」、「対策の強化」について、最新の科学的知見に基づき、報告されています。発表された SPM から一部を抜粋します。

最近の開発と現在のトレンド

  • 人為的な温室効果ガス(GHG)の正味の総排出量は、1850年以降の正味の累積CO2排出量と同様に、2010~2019年の間、増加し続けた。この間のGHG排出量は過去のどの10年よりも高かったが、増加率は2000~2009年よりも低かった。
  • GHG排出量は、2010年以降、全ての主要部門で世界的に増加している。都市域に原因特定しうる割合が増加している。化石燃料と工業化プロセスからのCO2排出量削減量は、世界全体の活動レベルの上昇による排出量の増加を下回っている。
  • 第5次評価報告書以降、緩和に対処するための政策や法律が拡充している。低GHG技術やインフラへの投資が増加している。資金の流れをパリ協定の目標に向けて整合させることは、依然として進みが遅れている。
  • 化石燃料インフラが、今後排出する累積CO2排出量は、温暖化を1.5℃に抑える経路の総排出量を上回り、2℃に抑える可能性が高い経路の総排出量とほぼ同じである。

地球温暖化抑制のためのシステム変革

  • 温暖化を1.5℃に抑えるモデル化された経路では、世界のGHG排出量は、2020年度からおそくとも2025年度以前にピークに達すると予想される。いずれの種類のモデルにおいても2030年、2040年、及び2050年を通して、急速かつ大幅なGHG排出削減が続く。
  • 温暖化を1.5℃に抑えるモデル化された経路では、世界全体としてCO2排出量正味ゼロ(ネットゼロCO2)に2050年代前半に達し、その後も正味の負のCO2排出を続ける。GHG排出量が世界全体で正味ゼロに達し、それを維持することは、温暖化の漸進的な低下につながる。
  • 温暖化を1.5℃、あるいは、2℃に抑えるモデル化された経路は、全ての部門で、急速かつ大幅に、そしてほとんどの場合、即時的に、GHG排出量を削減する必要がある。二酸化炭素回収・貯留(CCS)付の化石燃料のような超低炭素あるいはゼロ炭素エネルギー源への移行と効率の改善、非CO2排出量の削減、残留するGHG排出を相殺する二酸化炭素除去(CDR)法の導入が含まれる。
  • エネルギー部門全体を通してGHG排出量を削減するには、化石燃料使用全般の大幅削減、低排出エネルギー源の導入、代替エネルギーキャリアへの転換、及びエネルギー効率と省エネルギーなどの大規模の転換を必要とする。
  • 産業部門由来のCO2排出を正味ゼロにすることは、困難であるが可能である。削減技術や生産プロセスの革新的変化とともに、バリューチェーン全体での強調行動を伴う。低及びゼロGHG排出の電力、水素、燃料と炭素管理を用いた新しい生産プロセスの導入により可能となる。
  • CO2またはGHGの正味ゼロを達成しようとするならば、削減が困難な残余排出量を相殺するCDRの導入は避けられない。

緩和、適応、持続可能な開発の連携

  • 気候変動の影響を緩和し、適応するための加速した衡平な気候行動は、持続可能な開発のために非常に重要である。SDGsは、持続可能な開発の文脈において緩和オプションの含意を気候行動の評価基準として利用することができる。
  • 強化された緩和や、持続可能性に向けて開発経路を移行させるためのより広範な行動は、国内及び国家間に分配的な影響をもたらす。衡平性への配慮や、全ての規模における意思決定への全ての関係者の幅広く有意義な参加は、社会信頼を築き、変革への支持を深め、広げうる。

対策の強化

  • 強化された国連気候変動枠組条約(UNFCCC) COP26以前に発表された国が決定する貢献(NDCs)を超える短期的な対策は、1.5℃に抑える世界全体のモデル経路における長期的な実現可能性の課題を軽減や回避しうる。
  • 国際協力は、野心的な気候変動緩和目標を達成するための極めて重要な成功要因である。UNFCCC、京都議定書、及びパリ協定は、ギャップが残っているものの、各国の野心レベル引き上げを支援し、気候政策の策定と実施を奨励している。

詳しくは、「IPCC 第6次評価報告書第3作業部会報告書」(環境省)をご覧ください。

IPCC 第6次評価報告書 統合報告書(AR6 SYR 2023年3月)

 2023年(令和5年)3月、IPCC 総会で「第6次評価報告書」の統合報告書(SYR)の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、同報告書の本体が採択されました。

 AR6統合報告書は、2013年~2014年に報告されたAR5以降の観測データや研究成果などの最新の知見にもとづき、1.5℃特別報告書等の各種特別報告書と、2021年~2023年にかけて順次報告された3 つのワーキンググループの報告書の内容を合わせてまとめられました。今後の地球温暖化対策を検討するときの基礎資料となります。以下、一部を抜粋します。

現状と傾向

  • 人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことは疑う余地がなく、1850年~1900年に比べ世界平均気温は2011年~2020年に1.1℃の温暖化に達した。世界全体の温室効果ガス排出量は増加し続けている。
  • 大気、海洋、雪氷圏、および生物圏に広範かつ急速な変化が起こっている。人為的な気候変動は、既に世界中の全ての地域において多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼしている。このことは、自然と人々に対し広範な悪影響、および関連する損失と損害をもたらしている。

長期的な気候変動、リスク、および応答

  • 継続的な温室効果ガスの排出は更なる地球温暖化をもたらし、短期のうちに1.5℃に達する。
  • 気候関連リスクの多くはAR5 での評価よりも高く、予測される長期的影響は現在観測されている影響よりも最大で数倍高い。気候変動に起因するリスクと予想される悪影響、および関連する損失と損害は、地球温暖化が進行するにつれて増大する。
  • 人為的な地球温暖化を抑制するには、正味ゼロのCO2排出量が必要である。

短期的な応答

  • 大幅かつ持続的な排出削減を達成し、全ての人々にとって住みやすく持続可能な将来を確保するためには、全ての部門およびシステムにわたる急速かつ広範囲におよぶ移行が必要である。
  • 資金、技術、および国際協力は、気候行動を加速させるための重大な成功要因である。
    →詳しくは、「IPCC 第6次評価報告書 統合報告書」(環境省)をご覧ください。

なお、これにより、第6次評価報告書の各報告書の発表は終了しました。

令和5年4月25日更新

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