区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

平成25年度 地球温暖化防止月間講演会 当日レポート

南極のひみつをさぐろう!

概要

 次世代を担う子どもたちに、かけがえのない地球の大切さを伝え、地球温暖化対策の必要性を啓発するために、12月15日(日)に練馬区立生涯学習センターを会場に、地球温暖化防止月間講演会「南極のひみつをさぐろう!」を開催しました。

 当日は、親子連れを中心に42組75名の方が参加されました。

 今回は南極大陸がテーマとあって、講師の方お二人は、いずれも南極観測隊に参加された経験者。豊富な映像と、観測隊隊員ならではの貴重なお話に、会場は熱心に耳を傾けていました。参加者の中には講演終了後、講師にサインをねだる方もいて、南極観測への関心の高さがうかがわれました。

 また、講演のほか「見て、さわって感じる南極」と題した展示も行われ、南極大陸で発見された隕石や昭和基地の近くで採取した南極の氷など実際にさわれる珍しい展示物や、ペンギンのえさとなっている南氷洋の生物の標本や南極生活のパネルも展示され、多くの参加者が講演の合間に見学していました。

 受付では、講演資料のほか、国立極地研究所発行の冊子や、ねり☆エコのパンフレット、ポストカードが配布されました。

 会場入り口では、ねりねこ☆彡・ねりこんvvが参加者をお出迎え。握手をしたり一緒に写真を撮ったり、会場の盛り上げに一役かっていました。

 では、当日の模様をご案内いたします。

主催者あいさつ


横倉 尚会長

ねりねこ☆彡とねりこんvvも
応援に駆け付けてくれました!

 講演に先立ち、ねり☆エコの横倉 尚会長から、挨拶がありました。

 「今朝は、南極の話を聞くのにふさわしい寒さでしたね。さて、ねり☆エコでは、企業、区民、行政が協働して、地球温暖化のために何ができるか、それぞれの立場で活動しています。そのなかで一年に一度、子どもたちに興味・関心を持ってもらい、将来社会の役に立ってもらえるよう、講演会を開いています。今年のテーマは南極です。冬休みの勉強のテーマにもいい内容です。ぜひ、宿題に間に合わせてみてくださいね(笑)」とユーモアを交えたお話に、会場が和んだ雰囲気になりました。

講演第1部「南極が10倍好きになる越冬ライフ」


阿保 敏広(あぼ としひろ)氏

講師:阿保 敏広(あぼ としひろ)氏
(気象庁 観測部観測課観測システム運用室)

 講師の阿保さんは、第35次、45次観測隊の一員として、2回の越冬を経験。南極での1年を、豊富な写真を交えながら語ってくれました。

南極にはどうやって行くの?

 最初のテーマは、南極への道のりについて。チリやアルゼンチンからの高額な観光船に乗らずとも、タダで行ける方法…、それが観測隊だと阿保さんは言います。観測隊は、オーストラリアまでは飛行機で行き、自衛隊が運航する砕氷艦「しらせ」に乗船します。そこから先は、必ず暴風圏を通ることに。ひどい時は、船が40度傾くこともあるとか! そのため、テーブルにゴムを敷いて食事のトレーが動かないようにするなど、様々な工夫をしているそうです。

 南極に近づくと氷が増え、やがて海一面が氷になります。昭和基地に岸壁はないので、「ここかな?」という場所に接岸するのですが、近年は氷が厚く、接岸しにくいそうです。温暖化なのに、不思議ですね。

地球と太陽の関係

 地軸が23.4度傾いているので、日本の夏至は、南極の真冬でずっと夜(ミッドウィンター)。逆に、日本の冬至は、南極の真夏、ずっと昼で夜がありません。

昭和基地の1年間は?

 12月に昭和基地に到着すると、短い夏の間に新しい施設を作ったり、壊れた建物を直したり、日本に持ち帰るゴミを片付けたりして越冬の準備をします。

 そして、2月1日の「越冬交代式」を境に観測業務を引き継ぎ、1年後に「しらせ」が迎えに来るまでは越冬隊だけの生活が続きます。

 50年以上も続く南極観測ですが、その初期には、ブリザードで命を落とした方がいるなど、南極の自然の厳しさが語られました。

 一方で、調査活動の合間、かわいいアザラシやオーロラが見られる楽しみも。さらに参加者を驚かせたのは、「遊び」にも力を入れていること。「生活係」と称して、各職場の見学ツアーをしたり、毎日、新聞を発行したり、写真を見せ合ったり、喫茶店やバーを営業したり…それぞれの特技を活かし、毎日を充実させているそうです。イライラを抑制して争いごとが起きないようにする効果もあるとのこと。

 12月、新しい観測隊の到着と共に家族からの手紙や生鮮食料品が届くのも楽しみの一つ。一番うれしいのは生卵で、「生卵と千切りキャベツ」だけで、最高の朝ごはんなのだそうです。阿保さんのリアルな言葉に、会場がなるほど、という感動に包まれました。

昭和基地での楽しみ

 太陽が昇らない1日には、「ミッドウィンター祭」というお祭が開催されます。雪像を作ったり、劇をしたり、コックがフルコースを用意したり…。祭り以外でも、野菜を育てたり、生バンド、バーやソフトクリーム屋が登場したり、ビールを仕込んだり、氷上で流しそうめんをやったり。基地内の生活が息が詰まらないよう、皆が工夫して楽しく過ごしているそうです。過酷な南極生活のイメージを一変させる、楽しげな画像の数々が飛び出しました。

気象観測の話

 最後に、気象庁に勤める阿保さんらしい、気象の話も。色とりどりのオーロラの写真、動画も披露してくれ、会場は釘づけに。また、オゾンホールに関しては、回復傾向にあるものの、予断を許さない状況。何年かかるかはわからないとのことでした。

阿保氏コメント

 「とてもありがたい企画でした。今回の話をきっかけに南極に興味を持ち、将来、南極観測隊員を目指す子どもが現れてくれたらうれしいですね。地球規模のジャンルに、ぜひ飛び込んでください!」

講演第2部「ペンギン目線で南極を見てみたら…」


髙橋 晃周(たかはし あきのり)氏

講師:髙橋 晃周(たかはし あきのり)氏
(国立極地研究所 生物圏研究グループ 准教授)

 多くの人に愛される動物、ペンギン。その研究者で、過去9回も南極を訪れた髙橋氏が登壇しました。

ペンギンは南極にしかいない?

 最初に、「ペンギンは南極にしかいないと思うか?」という疑問を投げかける髙橋さん。結論は、「ペンギンは世界に17種類いる」。南極や南半球だけでなく、赤道直下のガラパゴス諸島にまで住んでいると明かし、会場を驚かせます。

 続けて髙橋さんは、主なペンギンを紹介していきます。南極にメインで生息するのが、コウテイペンギンとアデリーペンギン。アデリーペンギンは、あのSuicaのキャラクターのモデルになったペンギンだそうです。

 ほかにも南極大陸には、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンが生息。周りの島には、コウテイペンギンに似たキングペンギン、マカロニペンギンなどが生息。南極以外には、マゼランペンギン、日本の水族館に一番いるフンボルトペンギン、一番小さい種のコガタペンギン、絶滅が危惧されるガラパゴスペンギンなどが生息しているそうです。

温暖化で、南極のペンギンの数は減っている?

 続いてのテーマは、温暖化とペンギンの関係へ。そもそも南極が温暖化しているのかというと、「地域差が大きい」と髙橋氏。しかし、海水温は全般的に上昇しており、海を凍りにくくしているのは確かだそうです。実際、南極の一部の地域では氷を張る期間と面積が極端に減り、アデリーペンギンの個体数は減少傾向にありました。

 その原因のカギを握るのは、餌のオキアミではないかと言います。冬に海氷が張り出さないとオキアミが増えないため、オキアミを餌にするペンギンも減っているのではないか、と髙橋氏。しかし、他の地域では増加傾向にあり、温暖化の影響はより詳しく調べる必要があるとのことでした。

ペンギン目線で生態を研究

 陸上での観察は容易なペンギンですが、水中の観察は困難を要します。その観察のため、「バイオロギング」という記録計を背中に貼り付ける手法があるそうです。また、小型デジタルビデオを装着し、「ペンギンがとったペンギンの映像」「水中の餌とりの様子」といった珍しい画も紹介されました。

 これらの装置によって、ペンギンが経験する南極の環境変化を直接捉えていきたい…、そう語る髙橋氏の言葉からは、ペンギンへの愛がひしひし伝わってきました。

髙橋氏コメント

 「思っていた以上にお子さんが多く、うれしかったです。皆さんがとっつきやすいペンギンの話をきっかけに、温暖化にまで興味を広げてもらえたらうれしいです」

場内展示「見て、さわって感じる南極」


南極で発見された隕石。
見た目の小ささのわりに重く、
「意外に重い!」という声が多数聞かれました。

本物の南極の氷に、参加者は興味津々。
「触っていいの?」とおそるおそる
撫でる姿が見られました。

南極の氷の下で暮らす魚の標本。
ニラミコオリウオはヘモグロビンがなく、
血が白いという珍しい種類。

コウテイペンギンの翼(フリッパー)のはく製(写真左)も展示。羽毛が短いのが特徴です。
ナンキョクオキアミ(写真中央・右)は、
「小さいイメージがあったけど、意外に大きい」
という声も。

ウミタカスズキ

ボウズハゲギス

南極観測で実際に使用された防寒着。
隕石とは対照的に、「意外に軽い!」と
驚かれていました。

参加者コメント

  • 大人・男性「区報を見て、家族で参加しました。普段聞けないような南極での生活のお話が聞けて、面白かったです」
  • 大人・女性「南極で越冬した話が特に面白くて、もっと聞きたかったです。30分があっという間でした。すごく興味がわきました」
  • 小学生・女子「文鎮にできそうだと思うくらい、隕石が重かったです。防寒着の靴は、裏底がとても厚いのに、軽いのでびっくりしました」
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