第2期くらしのエネルギー・スキルアップ講座
第3回講座レポート
第一部 講習「本庄市エコタウンプロジェクトの概要について」ほか
1 「本庄市エコタウンプロジェクトの概要について」
春日 達也 氏
2 「埼玉県エコタウンプロジェクトについて」
松山 謙一 氏
3 「四季の里事業について」
金井 哲郎 氏・阪上 勝義 氏
第二部 見学「四季の里」ほか
1 見学「追尾式太陽光発電システム」
本庄市経済環境部環境推進課
2 自由見学「四季の里」
3 車内学習「地球温暖化の緩和策例ほか」
ねり☆エコ 沼田 美穂 委員
開催日時:平成29年1月20日(金)8時30分~14時30分
開催場所:埼玉県本庄市
第一部 講習「本庄市エコタウンプロジェクトの概要について」ほか
埼玉県本庄市役所では、埼玉エコタウンプロジェクトについての説明などをお聞きしました。
講演のはじめには、本庄市経済環境部の小林部長からご挨拶と本庄市およびエコタウンプロジェクトの概要について説明がありました。
1 「本庄市エコタウンプロジェクトの概要について」
最初に、本庄市経済環境部環境推進課エコタウン推進係長 春日 達也 氏から説明がありました。
(1)本庄市の地勢
本庄市は熊谷のすぐ近くにあります。快晴の日数は1~2を争う気候のいい都市であり、降水量は夏に向けて多くなります。利根川が近くにあり、群馬県とも接しています。近くの橋は坂東大橋があり、川を挟むと群馬の伊勢崎市がございます。
本庄市は平坦で安定した地盤をもち、地震にも強い都市です。標高が高くて眺望に優れており、恵まれた自然環境の中で、赤城山はとても綺麗です。
また、日本赤十字社の創設者である佐野常民氏(時の元老院議官)により本庄遷都意見書が提出された地でもあります。
(2)本庄市エコタウンプロジェクト
環境共生都市の実現にむけて「エコタウンプロジェクト」に取り組みました。
このプロジェクトは、再生可能エネルギーを中心とした創エネ、徹底した省エネ、エネルギーの地産地消を具体的に進めるモデルを全国に発信するというものです。
本庄市エコタウンプロジェクトは、①電力自活地区形成モデル事業、②本庄早稲田駅周辺のスマートハウス(スマートマーケット)、③公共施設・交通のエコ化、④LED・地中熱を利用した花卉野菜等栽培(エコファーム)⑤ソーラーエネルギーの有効活用(多様な再生可能エネルギー)、⑥工業施設のエコ化(エコファクトリー)、⑦工場跡地のエコ街区計画(スマートハウス)、⑧防犯灯のLED化の促進、⑨避難所の機能強化 です。
今日は、①を中心にお話しします。
重点実施地区は、本庄市四季の里地区です。ここは昭和60年代に分譲された既存住宅が多い地区です。
再生可能エネルギーを中心とした創エネ、徹底した省エネにより、既存住宅をスマート化していこうというプロジェクトを進め、530世帯中、HEMS83戸(普及率15.6%)、太陽光発電45戸、省エネ改修32件に加え、電力の見える化による省エネ行動の効果で、約10%の省エネとなりました。
(3)環境への取り組み
環境への取り組みとしては、エコタウンプロジェクトの他にも環境への取り組みを積極的に進めていた都市であります。
例えば、元小山川の再生への取り組みがあります。集落が密集しているところに流れており、高度経済成長のときに汚濁が進んでしまいました。下水道への接続や、ごみのポイ捨て防止などを進めていきました。結果として、水質の浄化が進み、いなくなった魚が復活するなどの成果が出ました。
他にも、打ち水対策や雨水の貯水を利用するなどの活動も推進しています。本庄市役所前にも貯水池が実際に見られました。
(4)地元企業との連携
最後に紹介させて頂くのは、「生ゴミの水切り運動」です。生ゴミの袋は約80%が水分というデータがあります。生ゴミを運ぶのにも大きなエネルギーが必要となるため、減量することは環境への取り組みにつながります。本庄市はオリジナルの水切りを配布するなどの「生ゴミの水切り運動」を行なっています。この活動を進めていくことで10%以上の水分を減らすことができ、1日2トンの減量ができます。
ここで紹介された水切りは、本庄市の公文書からの再生紙でできているトイレットペーパーと一緒に、本庄市役所から受講者の方々にプレゼントして下さいました。
2 「埼玉県エコタウンプロジェクトについて」
続いて、埼玉県環境部エコタウン環境課 課長 松山 謙一 氏から「埼玉エコタウンプロジェクト」について、お話をいただきました。
(1)エコタウンプロジェクトのきっかけ
元々は2011年の東日本大震災の影響で電気が止まったところから始まりました。埼玉県では計画停電も実施され、街が真っ暗になるという経験もありました。
電気が足りない、エネルギーをどうするか、また、火力発電にたよっているとCO2が多く出る。これをどうするかが、プロジェクトのきっかけとなりました。
(2)埼玉エコタウンプロジェクトの考え方
埼玉県には大きな発電所などは無く、電気の供給を増やすことはできません。電気は需要オンリーになります。
我々になにができるかと言えば、需要を減らす、減らせば供給が助かるという考えです。
省エネ活動で減らす、CO2を出さないエネルギーを地域で作る、創エネ、といった活動を通して需要量を減らすことが出来ると考えています。
地方でも需要量の削減ができる、というのがコンセプトになっており、エネルギーの地産地消を具体的に始めるモデルとして全国に発信していくということで、埼玉エコタウンプロジェクトは始動しました。
日本全国でできなければならない、という面から既成市街地を選びました。
新しい街づくりではなく既成の市街地なので、住民目線で。また、特定の事業者が活動するのではなく、多くの事業者に集まってもらい、様々なニーズに対応してもらう。
①既成市街地、②住民視点、③多様な事業者の参画のトライアングルがコンセプトで、人が住んでいる街を住民参加と企業の参画によりエコタウンに変えていこうというプロジェクトです。
(3)埼玉エコタウンプロジェクトの進め方
モデル市を決めてプロジェクトを進めることとし、県内の市から公募したところ13市が応募、その中から東松山市と本庄市を選びました。市域全体で行うのではなく、重点実施街区を定め、本庄市では四季の里地区を選びました。
太陽光発電設備、遮熱塗装、省エネ家電、HEMSの導入など、既存住宅のスマートハウス化を進める取り組みに力を入れていきました。
たとえば太陽光発電の費用対効果、そしてエコになることを、足しげく通い説明しました。補助金も活用しました。
そんなに難しいことをしているわけではありません。
太陽光や省エネ家電など一戸一戸がそれぞれに取り組んだものが、街区全体でみると大きな効果があります。
経済効果もあるのではないかと思います。施工には地元の企業も多く参画し、皆さまのお金が地域を活性化し、エコにもつながる活動になります。
(4)埼玉エコタウンプロジェクトの成果
取組の成果として、四季の里では、CO2を太陽光パネルによる省エネで59トン/年、その他の省エネの取り組みで34トン/年減らすことが出来ました。
これは、ブナの木8,500本の吸収量と同じで、四季の里21.3haとほぼ同じ面積の森に相当します。「四季の里は森になった」と言えます。同じことを全国でやれば、日本中を森にできるということになります。
その他の成果としては、避難所に太陽光発電、蓄電地などを備え、非常時にも灯りがつく、平時はエコだという避難所エコモデル、追尾式太陽光発電システムがあります。
数字的にまとめると、平成24年度~26年度の3年間の成果として、重点実施街区880戸のうち41.0%が参加し、太陽光発電普及率18.1%、プロジェクト全体でのエネルギー自給率は22.5%で、県内企業が施工した率は91.7%となります。
今後は、この知見を活かしてハウスメーカーと協働で「ミニエコタウン」ビジネスモデルを構築し、県内各地へ拡大していくなど、なんとか広げていきたいと頑張っています。
※数値は平成27年1月末時点です
3 「四季の里事業について」
エコタウンプロジェクトに参加した地元の方のお話しも伺いました。
(1)エコリフォームなどを施工した街の電気店「でんきのASKカナイ」社長 金井 哲郎 氏
私は、事業者として参加させていただいた側面と、住民の一人として参加させていただいた側面がありました。
エコタウンプロジェクトにおいて、それぞれの家庭で無理なくできることを見つけて取り組んだのがよかったと思います。特に、HEMSが非常に大きな役割を果たしていたと感じています。
(2)四季の里自治会長 阪上 勝義 氏
四季の里の自治会は昨年で30年を迎えました。
現在は、530世帯人口約1,500人前後で運営しております。私ごとになりますが、太陽光発電第一号という説明を聞いて協力しました。設置して7年と2か月がたっておりますが、現在までの発電量が26,988kWh、CO2を4,857k削減、約1.1khaのブナの木440本の林と同等の貢献ができたということで、自分でも数字を見て驚いた次第であります。
第二部 見学「四季の里」ほか
1 見学「追尾式太陽光発電システム」
講習に続き、エコタウンプロジェクトの重点実践地区である本庄市四季の里の見学をしました。
到着してすぐ追尾式太陽光発電設備を見物しながら、機能や性能についての説明をして頂きました。
公称最大出力は、3基合計で18.72kWです。
2 自由見学「四季の里」
続いて、四季の里の住宅街の自由見学をいたしました。
所々の住宅がソーラーパネルを設置しており、遮熱塗装がされている住宅が多かったのも印象に残りました。
実際に地域を見学した事で、自分の住んでいる地域でも実践出来るかもしれないと考えられるようになり、大変参考になりました。
3 車内学習「地球温暖化の緩和策例ほか」
ねり☆エコ
往復の車内で講習を行いました。
(1)往路
参加者同士の交流を図るため、講座応募のきっかけや自分が行っている活動等について、全員、自己紹介を行いました。
(2)復路
地球温暖化防止コミュニケーターである沼田委員の説明で、温暖化の適応と緩和例の資料映像を見ながら学習しました。
継続的に、省エネやエコについて学べる資格制度等について学習しました。
配付資料等
- 資料:本庄市へようこそ!(PDF)
- 資料:埼玉県エコタウンプロジェクトについて(PDF)
アンケートによる感想
第一部
- それぞれの講師の方のお話が事実に基いていて、とても興味深く、面白く聞けました。
- 既存住宅における省エネの取り組みが具体的に理解できました
- 自治体の熱意ある姿勢が感じられました。
- エコタウンプロジェクトの貴重なお話、大変楽しく、興味深く聞かせて頂きました。意識を少し変えるだけで省エネにつながるとおっしゃっていたのが印象に残りました。
- 本庄市の取組みは、一般の家庭が実践してきた素直な感想で、カナイさんの話は、実際の家庭での会話が聞こえるようで楽しかったです。
第二部
- 太陽光発電が充実していました。
- 遮熱塗装が結構使われているのが発見でした。
- 初めて追尾式太陽光パネルを見ましたが、意外と小スペースで驚きました。