区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

第1期くらしのエネルギー・スキルアップ講座

第3回講座レポート

第一部 講演「自然エネルギーを活かしたエコ住宅」

黒岩 哲彦(くろいわ あきひこ)氏

第二部 講演「プロから聴こう~電気の安全で賢い使い方」

一般財団法人 関東電気保安協会

ねりま・エコスタイルフェアについて

ねり☆エコ事務局

ワットモニター計測結果・展示について

ねり☆エコ 沼田 美穂 委員

開催日時:平成27年9月18日(金)10時~12時
開催場所:練馬センタービル3階会議室

第一部 講演「自然エネルギーを活かしたエコ住宅」

講師:東京都建築士事務所協会杉並支部 株式会社エクセルギー代表
黒岩 哲彦 氏

1 エコ住宅の考え方

 30年ほど前、国土交通省の河川護岸の設計をした際、「エコ」という言葉を使用したのですが、「そんな訳のわからない言葉は使えない」と指摘されました。その後「エコ」は一般に使われるようになりましたが、「エコロジー=生態系(生き物たちの世界)」の意味だと知って使われる方は少ないようです。

 本来は「エコ住宅」であるとすれば、その建物が、地球の生き物たちに役立っていることが不可欠なのです。

 同様に使われる「パッシブ(受け入れる)ハウス」は、「その地域の風土を受け入れる」ことであり、ドイツの基準をそのまま受け入れることではありません。また「スマートハウス」は、「情報処理(IT)」を住宅に導入するものです。「ZEH(ゼロエネルギーハウス)」は、いわゆるエネルギーを使わなくても暮らせる住宅ですが、計算上満たされればよいので、本当にゼロエネルギーになっているかどうかは、なかなかわかりません。そして、これからお話する「エクセルギーハウス」は、いままで挙げた「エコ住宅」「パッシブハウス」「ゼロエネルギーハウス」のどれにも当てはまります。

2 日本の家文化

 温度には、「空気の温度」と「面の温度」の2種類があります。「今日は暑くなる(空気の温度)ので気を付けましょう」という熱中症ですが、実は、空気の温度以上に、面から放射される熱(面の温度)が問題です。実際、夜間、昼の熱を蓄えて熱い天井のもとの室内で、人が亡くなったりします。また、日本では、冬、もともと局所で暖を取ることはあっても、部屋全体、天井、床、壁といった面が温かくなって、暖める文化はないのです。文化になっていないことは大工さんに聞いてもわかりません。われわれ専門家が多くの方と協力して地域にあった新しい技術を構築し、伝えていかないといけないと思っています。

3 電気と熱エネルギー

 住宅で使われるエネルギーを考えると「冷暖房」「給湯」「厨房」と、約6割以上が「熱」に関連しています。「熱ですむことは電気など使わずに熱を使いましょう」というのは北欧などでは常識です。最近、東京都でも「熱は熱で」が、スローガンになっています。

 現在の発電所では、エネルギーは「10」のうち「3」しか使えません。火力発電所は海の近くにありますが、「7」は海に熱として捨てています。同様に熱から電気をつくっている、福島の原発1基で考えると、利根川の水全部という大量の水が必要です。全量入れて温度が10℃上がるくらい熱を海に捨てています。そういう現状の中で、家庭の熱に電気を使う必要があるでしょうか。考えてみてください。

4 エクセルギーとは

 エネルギーは「ある種のモノを動かす能力」です。エクセルギーもほぼ同じ意味ですが、少し違います。

 エネルギー=エクセルギー+すでに拡散してしまっているエネルギー

 エクセルギーは、「エネルギーの本質」で「有効エネルギー」とも言われます。また、「“拡がり散り”を引き起こす能力」でもあります。例えば人が近づくと温かい。熱を出しています。熱は、拡がり散る力、だからエクセルギーを持っています。太陽の光、雨水、汗…。身近なところにはエクセルギーがたくさん存在していて、そのエクセルギーをどう活用するかが大切です。

 小金井市に作ったモデルハウスでは、「冷暖房」「給湯」「浄化」を畳1枚分の太陽電池で実現できていますが、それは身近なエクセルギー(いとなみの力)を活用できているからです。先に言った「空気の温度よりも、面の温度(面からの拡がり散り)」の工夫等によって、実現されるのです。こうした考え方さえわかっていれば、住んでいる人が自分で活用できます。ある住まい手は、冷蔵庫の上部から散らかるエクセルギーを使ってハーブの乾燥箱を作りました。「散らばる熱なら、集めて使おう」と思ったのですね。発想を変えれば、いろいろなことが出来ると思います。

 最後に私が今、力を入れていることは、一人でも多くの若い人達に環境ビジネスに就いてもらいたい、ということで、全国を回っています。社会全体を考えれば、それが一番大きな「エネルギーのスキルアップ」になると思っています。

質疑応答

Q:我が家は、効率的なヒートポンプを使ったエコキュートでエネルギーを作り、エアコンで冷暖房を行っている。経済的でもあると思うのだが、どう思われるか。

A:電気は便利だし、今は安いかも知れない。ただ例えばエアコンは、「1」の電気で室内を「3」冷やしてくれている。しかし外に「1+3」の熱を出してバランスを取っている「屋外暖房機」でもあるのです。今の事だけでなく、次の世代がどういう社会になればいいのか、を考えて投資することも必要ではないでしょうか。

配付資料等

第二部 講演「プロから聴こう~電気の安全で賢い使い方」

講師:一般財団法人 関東電気保安協会

1「知って安全 家庭の電気」


半断線によるショートの実験

 身近な電気が原因で火災等が起きることがありますので、今日はご紹介します。まず、平成22年の東京消防庁管内5,000件の火災のうち、約1,000件20%が電気火災でした。電気機器34%、配線器具と電熱器それぞれ22%の順で発災し、原因では接触部加熱33%、電線短絡(ショート)21%、トラッキング11%の順になっています。

 分電盤で多いのは、端子部にホコリがたまり、そこに水分(湿気)が加わって発火するものです。埋込みコンセントでは、差し込みプラグが浮いていたりすると、抵抗値が大きくなり、徐々に熱量(電流×電流×接触抵抗値×時間)が上がって発火します。電線短絡はたこ足配線などで、平成23年は都内で電気コード周辺の火災が568件発生しています。とくにビニールコードは被覆が弱いので、束ねて強く巻いたりしないでください。また、死角になる冷蔵庫裏のコンセントなどではトラッキングに注意が必要です。

(火災映像を視聴)

 1年に1回でよいので、プラグを抜いてホコリをきれいに取り除いてください。

 ビニールコードが机の下敷きなどになって「半断線」になった加熱火災について、今日は実験装置をお持ちしました。数十本ある線のプラスの線とマイナスの線を1本ずつくっつけてショートするかをご確認いただきます。

(実演)

 次に2本でやってみましょう。

(再度実演)

 1本、2本だけでも火花が飛びますので、数十本がショートしたらどうなるか、想像してみてください。またご家庭では延長コードをご使用だと思いますが、テーブルタップは、15Aなら1,500Wまでと定格電流が決まっています。きちんと計算してご使用になってください。

2「遮熱フィルム・遮熱塗装を用いた省エネ活動」

 当社は関東で9,400軒くらいのお客さまがいらっしゃいますが、エコプランナーやエネルギー管理士が省エネのコンサルを行っています。今日はその中で「窓の遮熱」についてご紹介します。

 夏、窓から太陽光がたくさん入ると部屋の温度が上がり、空調のエネルギーが余計にかかります。多摩方面の庁舎の事例では、窓に遮熱フィルムを貼ると、4℃くらい温度に差が出ました。赤外線カメラでも差がわかります。この例では、投資コストは、3.7年くらいで回収でき、CO2も削減できました。

 遮熱フィルムの場合、8年くらい経つと端の方からはがれてきたりするため、今は塗料の御提案もしています。今回はフィルム3枚のうち2枚をはがして、塗料を塗りました。結果を見ると、フィルムよりも効果があることがわかりました。さらにフィルムではスモークをかけたように暗くなりますが、塗料ではそういうことはありません。健康を害する「近赤外線」も防ぎます。大阪のビルの実施例では、電気代の節約で、投資コストは1.1年で回収できました。このような工夫は、「省エネ」で、かつ「省マネー」になります。

質疑応答

Q:電気火災が発生したらどうしたらいいのか?

A:発熱箇所の形状変化、変色、異音、異臭の前兆がありますので、まずは未然防止を心がけてください。発火し焦げるだけでなく、延焼してしまったら、消火器等で対応してください。

配付資料等

説明「ねりま・エコスタイルフェアについて」

ねり☆エコ事務局

説明「ワットモニター計測結果・展示について」

ねり☆エコ 沼田 美穂 委員

参加者アンケート結果から

第一部

  • エクセルギーの考え方に新鮮さを感じた。
  • 感覚的には理解していたつもりであったが、具体的な説明があり、納得がいった。
  • 根本的に考えが変わる。もっと若かったら、家の建設に役立ったと思う。
  • エネルギー使用は、次世代のことも考えなければいけないと学んだ。

第二部

  • 実験が分かり易い。遮熱塗装に結構効果があるのがわかった。
  • 日常生活と密着した説明だった。
  • テーブルタップの接続機器を見直すこととします。
  • コンセントの清掃とチェック点検をしよう!
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