区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

平成27年度 省エネルギー月間講演会 当日レポート

何が変わるの?電力小売自由化

概要


受付の様子

 “資源とエネルギーを大切にする”「省エネルギー月間」講演会は、今年は、〈電力小売自由化〉を取り上げました。

 平成28年4月から、電力の小売が自由化されます。今まで家庭の電力は 、地域によって定められた電力会社から供給されていましたが、これからは新たに参入する多くの小売電気事業者から選んで契約することができます。

 〈電力小売自由化〉では、市場の自由競争による料金の引き下げなどが注目されていますが、スマートメーターによる「電力の見える化」と相俟って、自分たちの電力の必要量を考え、エネルギーを見つめ直す機会ともなります。

 そこで、まず、電力小売自由化の概要や、消費者が注意すべき点等について、経済産業省電力取引監視等委員会取引監視課長の新川達也氏にご講演いただきました。

 続いて、電気料金のしくみや今までのねり☆エコの省エネ事業から家庭の電気を考えることについて、会員で消費生活アドバイザーの沼田美穂委員が説明しました。さらに同じくねり☆エコ会員で今回、電力小売事業を行う東京電力(株)、東京ガス(株)、(株)ジェイコム東京の3社から、プランや新メニューを紹介いたしました。

 厳しい寒さにも関わらず、会場のCoconeriホールには、250名近いみなさまにご来場いただき、大変盛況となりました。

主催者あいさつ


横倉 尚 会長

ねり☆エコ横倉尚会長の挨拶

 「2016年も、エネルギーをめぐるいろいろな動きや出来事がありますが、中でも大きな事の一つは、地球温暖化への世界的な新たな取り組みに密接に関連するエネルギー問題です。2015年末、COP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)でパリ協定が採択され、世界の平均気温上昇を2℃までに抑えるための温室効果ガスの削減目標を掲げ、世界全体で対策を進める大きな枠組みが決まりました。そのなかで我々が最も影響されるのが、どのようなエネルギーをどう使うかというエネルギー問題です。これは世界共通の問題です。

 もうひとつは本日のテーマである、電力小売全面自由化です。これまでの日本では、国のレベルは別にしても日常生活の中ではどんなエネルギーを使うかはあまり考えられてきませんでした。それは、私たちが日常的に使う電気や都市ガスの販売事業者が、各地域で一社と決められていたこともあったからです。他のサービスと違い、どこから買うか選択の余地がないという仕組みが、戦後70年続いてきました。

 それが、この4月から大きく変わります。我々は、日本のエネルギー史上の歴史的転換の一時代を経験することになります。本日は講演をお聞きいただき、ぜひ、みなさんの生活に活かしていただければと思います」

第一部 基調講演「電力小売の全面自由化について」

経済産業省電力取引監視等委員会取引監視課長 新川達也氏による講演概要


新川 達也 氏

 初めに、日本の電力供給の仕組みですが、電力は発電所で発電し、送電線を通り変電所を経由して配電線の経路をたどり、消費者の皆さんに供給されます。システム的には、発電部門(発電所)、送配電部門(発電所から消費者まで)、小売部門(消費者とのやりとり)の大きく3つの部門に分類されており、今回は小売部門への参入が自由化になります。例えば自由化になると電線が増えるの?という質問がよくありますが、送配電は今まで通りですので、線が増えることはありません。

 電力の自由化は、大規模工場などでは2000年から段階的に行われていました。それが2016年4月からは、さらに家庭や小さな店舗にも広がり、全ての需要家が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになるということです。ただし、現在の契約のままでも電気は供給されますので、必ずしも契約変更をする必要はありません。

 電力小売に新規参入する事業者は、平成28年1月28日時点で148社。最終的には300社を超えると考えられていますが、全社が家庭の電力小売に参入するわけではなく、地域によって参入する事業者が異なってきます。小売電気事業者は発電所と契約して電気を購入し、消費者の皆さんに電気を売ります。各発電所で発電した電気は送電線の中で全部が一緒になるため、どの事業者から購入しても家庭に届く電気の『質』は同じです。しかし契約上の概念として、小売電気事業者が購入した電気が消費者に供給されると考えます。

 電源構成の開示については、消費者が電源構成を比較して事業者を選択することが可能になるとともに、価格以外の特性を差別化した要素とした競争が生じ、より自由な電力市場の実現に資することが期待されます。一方で開示の義務化は、小規模事業者にとっては負担になる、発電事業者から電源種別に関する情報提供が必要となるなどの課題もあります。そこで現段階では、電源構成を開示することを、“望ましい行為”と位置づけ、事業者の取り組みを政策的に促していき、今後、需要家のニーズや事業者の取組を注視し、市場が適切に機能していないと考えられる場合には、改めて開示の在り方について検討することが必要になると考えています。

 販売契約を結ぶ際に、小売電気事業者が消費者の皆さんに対して説明すべき重要な点では

  • 小売電気事業者の社名や連絡先
  • いつから電気を供給するのか?
  • 契約期間はいつからいつまでか?
  • 契約期間満了後の契約更改手続きはどのようになるのか?
  • 毎月の電気料金はいくらか?どうやって算定するのか?
  • 通常の手続きに加え必要な工事などがある場合、消費者が負担する費用はいくらか?
  • 電気料金の割引がある場合には、それはいくらか?割引の対象期間はいつまでか?
  • 契約期間内に解約する場合の制約はあるのか?解約手数料などは発生しないのか?

 などが考えられます。

 さらに、皆さんが電気の購入先を選ぶときに注意すべきことでは、

  • 国の登録を受けた小売電気事業者か、その媒介・代理・取次ぎであるか確認する!
  • 「電気の使用料はいくらか?」など、契約の内容をきちんと確認する!
  • 停電など困ったときの連絡先を確認する!

 などがあります。

 既に国民生活センターにも、自由化に便乗した勧誘のトラブルなどが寄せられていますので注意してください。

詳しくは、講演会当日の資料をご覧ください。
当日配布資料はこちら(PDF)

 また、電力取引監視等委員会では、電力小売全面自由化に関する消費者向けのQ&Aを作成し、随時更新しています。下記からご確認ください。
http://www.emsc.meti.go.jp/info/faq/

第二部「賢く選ぼう!新メニュー・サービス」

ねり☆エコ会員、消費生活アドバイザーの沼田美穂委員による
「家庭のエネルギーを考えるきっかけにしたい自由化」の講演概要


沼田 美穂 氏

 4月に向け、各社様々なメニューやプランが提案されています。今回、『お得なメニューをどうやって選べばよいか?』という事前のご質問が大変多かったのですが、現在の電気料金は、様々な項目が組み合わされ計算されているので、まずは、電気料金の内訳を知ることが大切です。

 1つ目が「基本料金」。現在、ご家庭で多い契約は10~60アンペアだと思います。例えば30アンペアであれば、同時におよそ3000ワットまで家電機器が使用できるという契約で、各家庭によって契約が違いますので、基本料金も異なっています。また新電力では、少ないアンペア契約の方は対象外となっている場合もありますので確認が必要です。

 2つ目が「従量制」の「三段階料金制」のしくみです。画面にあるように使用量によって三段階で単価に格差があるため、使用量が少ない方には負担が少なくなっています。

 3つ目が「燃料費調整」。これは火力発電のコストに関わるもので原油・LNG(液化天然ガス)・石炭の3か月間の価格にもとづき、平均価格を算定し、電気料金に反映します。現在、単価がマイナスになっていますので資料9枚目の「燃料調整の推移」の試算によると900円差し引かれることになります。

 4つ目が「再エネ発電賦課金」。太陽光発電などによる再生可能エネルギーの買取りに要する費用を、賦課金として皆さんで負担しています。

 電力使用量は、在宅時間、世帯人数、家の断熱性能、電気機器の種類や使い方によって変わります。また、夏と冬でも、1日の中でも大きく変動するので、電気料金は私たちの暮らし方で大きく変わってきます。ねり☆エコのモニターの方の例では、日中ひとりのときは大型テレビではなくポータブルテレビを使う、夜は家族全員で湯タンポを使う、家族が一つの部屋で一緒に過ごすといった省エネ行動で電気料金の削減につなげた事例がありました。

詳しくは、講演会当日の資料をご覧ください。
当日配布資料はこちら(PDF)

ねり☆エコ会員で小売電気事業者3社から、新メニュー・サービスの紹介

東京電力(株)の説明概要

東京電力(株)

 4月から新たに5つの料金プラン、8つのメニューをご用意します。現在のご契約を継続希望の方は手続き不要です。

 新しい料金メニューでは、ポイントサービスの開始、一部のメニューで3月31日迄の先行申込みの特典有、さらには、提携先の他事業者によるセット割引があります。また、くらしサービスとして「くらしTEPCO」などウェブ上での省エネ診断等の情報提供のほか、電気の駆けつけサービスや住宅設備の故障・修理サービスをお付けした料金メニューもあります。

 「スタンダードプラン」は、時間帯や曜日を気にせず、幅広い層にご利用いただけます。月平均のご使用量が300~600kWhの方向けで、3つのメニューを用意しています。

 「プレミアムプラン」は、月平均のご使用量が600kWh以上の電気の使用量が多い方向けで、2年契約があります。

 「スマートライフプラン」は、エコキュートなどを使用するオール電化住宅の方向けです。

 「夜トクプラン」は、比較的夜間に電気を多く使用する方向けです。

 「スマート契約」は、スマートメーターで計測した過去1年間(その月と直前の11ヶ月)の各月のピーク電力のうち、最も大きい値を契約電力とします。その契約電力に料金単価を乗じて、基本料金を算出します。日頃から上手に電気を使用すれば、基本料金が下げられます。

 現在のご契約を継続されることをオススメする方、また、新しい料金プランをオススメする方、各家庭の状況で違いますので、まず自分に合ったプランを試算してみてください。

 新料金プランやメニューの詳細、試算は東京電力のホームページからご覧いただけます。
http://www.tepco.co.jp/jiyuuka/index-j.html

東京ガス(株)の説明概要

東京ガス(株)

 東京ガス(株)からは、お客さまのニーズを踏まえ、「お得」「安心」「簡単・便利」をいう3つの価値をお届けするサービスとして「ずっともプラン」が紹介されました。お客さまの生活スタイルやビジネスニーズに合わせて、「ガス」「電気」に加え、「各種サービス」の中からお客さまが自由にお選びいただき、組み合わせることができるトータルプランになっており、3つのメニューがあります。

 「ずっとも電気1」:現在、東京電力の従量電灯B相当の方にオススメ。

 「ずっとも電気2」:現在、東京電力の従量電灯C相当の方にオススメ。

 「ずっとも電気3」:現在、東京電力の低圧電力相当の方にオススメ。

 プランの特徴としては、1つ目が、「電気料金連動ポイント」。月々の電気料金に応じてポイントがたまるシステムで、1,000円につき15ポイント、1ポイント1円相当になります。ポイントの使用方法としては、東京ガスオリジナルグッズへの交換や東京ガス提携会社のポイントへの交換などがあります。

 2つ目が、インターネットも加えると、さらにお得になる「トリプル割」。

 3つ目が、「生活まわり駆けつけサービス」。水まわり・鍵・ガラスのトラブルに駆けつけて修理を行うなど、専門スタッフが24時間365日受付し駆けつけ訪問するサービスがあります。

 myTOKYOGASの会員になると、ウェブ上で毎月のガスと電気の使用量や料金をまとめて確認できるサービスやクックパッドのプレミアムサービスで人気の「人気順検索」が利用できるサービスなどもあります。

「ずっともプラン」についての詳細や、料金プランのシミュレーションは、東京ガスのホームページからご覧いただけます。
https://request.tokyo-gas.co.jp/power/req/index.html

(株)ジェイコム東京の説明概要

(株)ジェイコム東京

 (株)ジェイコム東京は、ケーブルテレビ事業の会社であり、今までエネルギーとは関係のなかった会社ですが、法律の改正により4月から電力小売事業に参入させていただきます。参入の経緯としては、通信と放送、また昨年の秋からはJ:COMモバイルという、社会インフラの重要な部分を提供してきたサービス経験を活かして、電気エネルギーに進出します。

 ジェイコムでは、J:COM Everywhereをキャッチフレーズに、お客さまの生活全ての様々なサービスを任せていただくことを目指しています。現在もパソコンの使い方がわからない時には駆けつける「おまかせサポート」などがあります。

 電力自由化についてジェイコムは、3年前から大型集合住宅で開始しており、74千世帯の実績があります。4月から小売商品のメニューとして「J:COM電力 家庭用コース」が始まります。プランの特徴は3つ、①契約からアフターサービスまで一括して申込みができるワンストップ。②電力使用量が多いファミリー層にお得。③料金形態は1つでシンプル。ということです。

 割引率としては電力使用量により異なりますが、現在、三段階料金制の第三段階の料金が10%お得になります。

 「J:COM電力 家庭用コース」は、J:COMご加入者様向けになります。未加入の方は、指定するテレビやインターネットを含む長期プランへの新規ご加入が必要になります。
 J:COM電力プランについての詳細や、料金プランのシミュレーションは、J:COMのホームページをからご覧いただけます。
http://www.jcom.co.jp/promo/electricity/

質疑応答


質疑応答

 事前、当日にお受けした質問の中から、問合せが多く、また多くのかたに共通することにお答えしました。

Q:停電や災害などのトラブル時は、どうしたらいいですか?

A:原則は、契約された小売電気事業者に連絡してください。ただし送電線、配電線の不具合の場合は、東京電力の送配電部門になります。(新川氏)

東京電力の送配電部門が電気設備のメンテナンスを行いますので、停電などでお困りの際は、今まで通り問い合わせください。問い合わせ先は検針票やホームページでご確認ください。(東京電力)

Q:東京電力で4年に1度行われている電気設備安全点検は、新電力でも継続されますか?

A:東京電力は4月1日から、発電部門、送配電部門、小売部門と3つに分社化されますが、送配電部門が引き続き行います。(東京電力)

Q:契約に「期間や解約条件」がありますか?

A:東京電力では、基本的には1年契約ですが、プランによっては2年契約もあります。2年契約は、契約期間満了日から遡って2か月の間以前に解約する場合、解約金が発生します。 (東京電力)

東京ガスでは、電力購入に関しては、解約条件はなく、解約手数料もかかりません。ただし、インターネットにお申込みの場合は、プロバイダーとの契約期間はあります。(東京ガス)

ジェイコム東京では、契約がケーブルテレビとパッケージのため、パッケージ料金の解約金が必要になります。(ジェイコム東京)

Q:電源構成について開示はありますか?

A:電源構成の開示は「望ましい行為」として位置付けており、電源構成を積極的にアピールしたい事業者が開示しており、その取組を政策的に促していくことが適当としています。現在は努力義務であり、罰則等はありません。(新川氏)

東京電力では、現在、電源構成をホームページで開示しています。(東京電力)

東京ガスでは、開示に向けて準備中です。(東京ガス)

ジェイコム東京は、サミットエナジー(株)から電力供給しています。サミットエナジーは、石炭、バイオマス、風力発電、太陽光発電などを使用しています。開示に向けては準備中です。(ジェイコム東京)

Q:現在、太陽光発電などを使って売電をしていますが、売電価格は変わりますか?

A:電気の購入先を変更しても、太陽光発電設備により発電した電気の売電に係る契約は変わりません。売電に関しては、資源エネルギー庁が所管で、現在、法律の見直しを行っております。改正されるまでは現行通りとなります。(新川氏)

Q:自由化により電気料金が安くなるのは何故ですか?

A:今までは「総括原価方式」のもと電気料金規制をしてきました。4月以降は、供給を安定させるため、送配電部分までは、新規参入業者も含め各社が同額で負担しますが、小売部分で各社に競争していただくため安くなります。(新川氏)

Q:小売電気事業者が、電気を調達できないことはありませんか?

A:新電力で参入する事業者は、契約で発電所を確保したり、卸電力市場や東京電力から調達します。もし、卸売電力市場から電気を調達できなくるような場合は東京電力の送配電部門が新電力事業者に補給することになりますので、ただちに供給が停止することはありません。電力取引監視等委員会では、送配電事業者が供給を確保しているかどうかも審査しています。(新川氏)

Q:スマートメーターに交換する際に留守にしていても大丈夫ですか?

A:どの小売電気事業者との契約でも東京電力がスマートメーターに交換します。各家庭の敷地内に入るので基本的には立合いが必要になりますが、お客さまからの了解があれば不在でも行います。(東京電力)

新川講師コメント

 「4月からは、いろいろな料金メニューが出てきて、どう選べばよいか? と心配されている方もいらっしゃるかも知れません。また、必ずしも選び直したほうが料金が安くなるとも言えませんので、今日の話を踏まえてよくご検討いただき、また事業者の話を聞いて、ご納得いただいたうえでご契約ください。また、もし悪質な業者がいた時には、電力取引監視等委員会にご連絡ください」

参加者コメント

  • 講師の話がわかりやすくてよかった。充実していた。
  • 何をチェックすれば良いのかわかった。全体的に話がわかりやすかった。
  • 参考になったので検討する。
  • Q&A等が参考になった。
  • 今まで料金がどのように決定されるのか無関心だった。今回を良い機会に意識を持って生活して行こうと思う。

 新川氏をはじめ、ご参加いただいたみなさま、ご協力いただいた多くの関係各位に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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