ねりまのエコ語り
練馬区地球温暖化対策地域協議会 事業部会長
認定NPO法人自然環境復元協会 顧問
昭和30年、長野県生まれ。練馬区に住んで30余年。幼少期より虫好き。長女の夏休みの宿題の標本作りのため、一緒に出かけた昆虫採集がきっかけで虫好きが再燃。ライフワークは昆虫などの生きもの観察。毎年、希少種であるギフチョウの写真を撮りに新潟へ夫婦で行くのが楽しみ。みどりのまちづくりセンター憩いの森プロジェクトリーダーでもある。
認定NPO法人自然環境復元協会
第二の人生は
自然環境にかかわる活動がしたい
認定NPO法人自然環境復元協会に入ったきっかけは何ですか。
勤め先の建設会社で、水処理や土壌浄化、緑化・生態系保全といった環境関連の研究開発に長年携わってきました。今も研究所に勤務していますが、50歳になる手前くらいから、第二の人生を考えるようになりNPO活動を視野に入れていました。
自然環境を保護するという、この種のNPO法人は数多くありますが、自然環境復元協会は、原生の自然保護というよりも、人の手の入った里山のような二次的な自然環境の保全、再生を目指しています。日本にビオトープを広められた初代会長の杉山惠一先生(故人)が唱えられ、この考えに共感して、入会しました。
自然環境復元協会ではどのような活動をしていますか?
自然環境を保全するための技術はそれなりに蓄積されてきましたが、いま「自然とヒトの関わりの再生」が求められています。自然環境復元協会では、この面での人作りに重点を置いて「環境再生医」を育成し、資格を認定しています。初級、中級、上級とありますが、私は上級の資格を取得しています。大学とも連携し、大学の講座に組み入れて育成しており、全国に5,000人ほどの有資格者がいます。
「レンジャーズプロジェクト」という活動もしています。ビオトープにしても作ったあとの維持管理が非常に難しい。高齢だったり、人手が足りずに保全活動に困っている団体が多く、そういう団体と自然を守るボランティアをしたい人を結びつけ、草取りや外来種駆除などを手伝っています。多くの若い人たちが活躍しているんですよ。また、農林水産省より受託して、農山漁村の活性化の支援もしています。
石垣島にて
いきものと会えるみどりの場所づくりを目指す区民団体「いんせくとかふぇ」主催の観察会にて
(2009年)
カタクリの蜜を吸うギフチョウ
新潟県十日町市にて
(小口さん撮影)
環境再生医の講習会にて
生態系の一員として考え、
行動を起こすためにできること
小口さんにとって、エコとは?
「ねり☆エコ」の「エコ」でもあるように、「エコ」というと、地球温暖化対策にかかわる温室効果ガス削減や省エネなどをイメージされると思いますが、私の中で「エコ」というのはもっと大きく、「エコロジー(生態学)」の分野でいう「エコシステム(生態系)」でとらえています。
「生態系」とは生物とその生息環境のまとまりを表す言葉です。例えば、人の腸内が腸内細菌にとっての生態系であるように、全ての人にとって、また、全ての生きものにとって地球そのものが生態系です。いま問題になっているのは、産業革命以降、人の活動が突出したあまり、生態系のバランスを崩してしまったことにあり、それがブーメランのように生態系の持続性の問題に跳ね返っています。
地球温暖化の主な起因である温室効果ガスについては、具体的な排出量の削減目標が定められています。一方で、生態系が劣化していることは数字で示すことがなかなか難しく、対策目標も立てづらいのが大きな問題です。
では、どうしたらいいのか。私は自然が好きで、生きものが好きで、「自然に触れたい」という感性が少なからずあります。この感性は、生態系に生きるホモ・サピエンスのヒトとして誰しもに備わっているものではないでしょうか。ヒトの本質を表す意味で「内なる自然」という言葉が使われますが、そういう感性を呼び起こすことが必要であり、そのためには、就学前からの教育がとりわけ重要ではないかと思っています。
ねり☆エコの昨年12月の地球温暖化防止月間の講演会では、子どもを対象に、小口さんたちが生きものについてお話されましたね。
子どもたちには、「なぜ、地球温暖化の講演会で、生きものの話がされるのか?」がわかってもらえれば成功です。また、ねり☆エコの「こどもエコ・コンクール」や「ねりまエコスタイルフェア」も子どもたちが主役です。コンクールの作品を描いている間は、少なくとも環境や地球温暖化について一生懸命に考えてくれている。エコスタイルフェアではブースを回りながら、「地球温暖化」や「省エネ」という言葉を聞いて体験してもらう。子どもたちに参加体験してもらうことに、大きな意義があると思います。
小口さんは今年度から、ねり☆エコの事業部会長に就任されました。今後どのような活動をしていきたいですか。
地球規模で考える「Think globally」と同時に、一人ひとりが行動を起こす「Act locally」という、この2つの観点でできることを考えていきたい。
「Think globally」では、自分は本来、生態系の一員であるということを認識してもらうために、地球温暖化とはどういうことか、区民にわかりやすく伝えていきたい。生物多様性、フードロス、資源循環など、幅広い見方があることもお伝えしたい。「Act locally」のきっかけづくりとしては、家庭の省エネのアドバイスなど、いろいろな情報発信を積極的にしていきたいです。
とくに、「練馬区は夏が暑い!」ということで、区民の皆さんにとっては地球温暖化というよりも、ヒートアイランドのほうが肌で感じとりやすいかもしれません。ヒートアイランドの問題も取り上げていきたいです。
また、新しい事業を考えるときは、私どもの委員だけで考えるのではなく、例えば、区民の皆さんにアンケートをとるなどして、区民の意見を事業に反映できるような仕組みづくりを考えているところです。
小口さんご自身が、エコや温暖化対策のために取り組まれていることはありますか。
もともと「もったいない」という感性が強いので、もったいないことはやりません(笑)。電気をこまめに消す。食べ物は残さない。「何でそこまでやるの?」と子どもたちに言われるくらい、徹底してやっています。個人ができることは限られていますが、個人がやるべきことをやることで、地球温暖化対策の大きなうねりになると思っています。
(平成30年11月15日)
平成29年12月3日(日)、ねり☆エコ主催の講演会で「石神井公園の昆虫たち」について話す小口さん(右)
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会場は親子連れを中心に大勢の参加者でいっぱいに!
小口さんが大好きなアオヤンマ。5月頃から初夏にかけて、ヨシ原の中を飛ぶ、めずらしくて美しいトンボ
(講演会スライドより)
講演会後、参加したお子さんから質問を受ける小口さん