区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

令和2年度 省エネルギー月間講演会当日レポート

講演「快適・安全なすまいのつくりかた~ネットゼロエネルギー住宅(ZEH)の現状と課題」

日時:令和3年2月23日(火曜・祝日)10時~正午
場所:練馬区役所アトリウム地下 多目的会議室
講師:芝浦工業大学 建築学部建築学科教授 秋元孝之氏

概要

 令和3年2月23日(火・祝)、省エネルギー月間講演会を開催しました。新型コロナウイルス感染防止対策のため、定員を通常の半分(50人)に減らしての開催となりました。会場は役に立つ情報を得ようとする参加者が集まり、講師の話に熱心に耳を傾けました。

 今回のテーマは「ネットゼロエネルギー住宅(ZEH)の現状と課題」。ZEH(ゼッチ)の定義からその効果、リフォーム時のポイントなど、最新の研究や動向を踏まえて紹介。特にメリットについては、省エネや温室効果ガス排出削減といった直接的なメリットだけではなく、家族の健康や快適、安全安心という副次的な観点からも説明していただきました。

 来場者からは「大変勉強になりました」という声が多く、「築60年の古い家をどうするか迷っていましたが、費用はかかっても前向きに省エネ住宅を考えたい」といった感想も聞かれました。会場の後ろに展示された「第10回こどもエコ・コンクール」入賞作品を鑑賞する姿も多く見受けられました。

 アンケートに答えていただいた方全員に「ステンレスミニボトル」を参加記念としてお渡ししたほか、関連資料も配付しました。

講演会全体の様子

こどもエコ・コンクール入賞作品展示

参加記念品

当日の様子を動画でご覧になれます

【ZEH】令和2年度省エネルギー月間講演会 1/4

【ZEH】令和2年度省エネルギー月間講演会 2/4

【ZEH】令和2年度省エネルギー月間講演会 3/4

【ZEH】令和2年度省エネルギー月間講演会 4/4

主催者挨拶

横倉 尚 会長

ねり☆エコ 横倉 尚 会長

 この講演会はちょうど1年前に開催する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止になりました。本日、このような形で講演会を開催することができました。募集開始翌日に定員が満杯になったということで、皆さんを随分お待たせしたなと、改めて思いました。

 地球温暖化に関して、この1年の間に国内外で大きな動きがありました。日本でも、菅総理大臣が所信表明演説の中で、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という宣言がされました。住宅をめぐる地球温暖化対策の中でどのようなことが考えられているのか、最新の動向を含めて秋元先生から伺えればと思います。

講演「快適・安全なすまいのつくりかた~ネットゼロエネルギー住宅(ZEH)の現状と課題」

秋元 孝之 氏

講師:芝浦工業大学建築学部建築学科教授 秋元 孝之 氏

【プロフィール】1988年、早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了。米カルフォルニア大バークレー校環境計画研究所に留学。工学博士。一級建築士。清水建設、関東学院大学工学部建築学科を経て、現職。建築設備綜合協会会長。専門分野は建築設備、特に空気調和設備および熱環境・空気環境。
当日の資料はこちら

 本日は、ネットゼロエネルギー住宅(以下、ZEH)を、「快適・安全なすまいのつくりかた~ネットゼロエネルギー住宅(ZEH)の現状と課題」と題して紹介したいと思います。

※ZEH:「ネットゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、「快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅」と定義されています。

資料1

 日本は、2030年度までに最終エネルギー需要を、5,030万kl(原油換算)程度削減するという目標を掲げています。(資料1)

 産業、業務、家庭、運輸の4部門があり、主に建築が関わるのは業務部門と家庭部門です。ビル(住宅ではない建築)は業務部門、住宅は家庭部門にあたります。

資料2

2017年度時点で削減できたエネルギー量は全体で1,073万klで、目標の21.3%です。(資料2)

 家庭部門の削減目標は1,160万klです。LED照明をはじめ、省エネ効率の高い機器を導入し、住宅全体の省エネ化を進めることで目標を達成する狙いがあります。

資料3

 国や自治体でも対策が進められており、その要となるのが「建築物省エネ法」という、建築にかかわる省エネについて定められた法律です。昔の「省エネ法」は産業全体の省エネを網羅した法律でしたが、「建築物省エネ法」はそこから建築物が独立した形のものになっています。(資料3)

 その中の一つに「住宅・ビルのゼロ・エネルギー化の推進」があり、住宅では「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」としています。

 住宅以外では「2020年までに国を含めた新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:ZEHのビル版)の実現を目指す」としています。

 新築の公共建築物は全国的にゼロエネルギー化が進んでおり、完全にゼロエネルギーでなくても、省エネを考えた建築物が増えています。今後、既存の建物をどのように省エネルギー性の高いものに改修していくかが課題となっています。

資料4

 2015年にパリで開催された「COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)」で、日本は民生部門(業務部門と家庭部門を合わせたもの)で、CO2排出量を2030年までに4割削減するという目標を掲げています。(資料4)

 この目標を達成するためには戸建住宅に加え、集合住宅でも対策が求められ、既存の住宅の改修も重要になります。

資料5

「SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)」については、最近メディアでお聞きになっているかと思います。SDGsは「持続可能で多様性と包摂性のある社会」を、2030年までに実現しようという国際目標で、住宅にかかわる項目もあります。(資料5)

 具体的な取り組みとしては、省エネや再エネ、気候変動対策、循環型社会の分野で、「ZEH・ZEBによって住宅・建築物の省エネ化、低炭素化を推進する」ということが挙げられています。

資料6

 さらに住宅の省エネ性能の向上を進めるため、「建築物省エネ法」の一部を改正する法律が制定され、規制が進んでいます。具体的には、省エネルギー性能を建築計画に盛り込むことを義務化し、条件に満たないものは建築が許可されないといった内容です。(資料6)

資料7

 以前の省エネ法では、建物を作る場合、大規模(2000㎡以上)と中規模(300㎡以上2000㎡未満)は届出義務となっていました。(資料7)

 建築物省エネ法では、大規模の非住宅については「適合義務」となり、省エネのことを考えた計画でないと、建築の許可が下りなくなりました。現在は中規模以上の非住宅も「適合義務」となっています。つまり、300㎡よりも大きなオフィスビル等は、省エネルギーの性能を考えた設計をしないと建てられないということです。

 戸建住宅は省エネの義務化はされていませんが、2021年4月から、建築士が建築主に対して、省エネ性能に関する説明を必ず行うという義務が課せられます。

資料8

 ZEHは「1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅」と定義されています。(資料8)

 ZEHの実現にまず必要なことは、高断熱化です。窓や壁、床、天井の断熱性を高めることで、エネルギーを極力必要としない環境を作ります。

 その上で、エネルギーを上手に使うために、エアコンなどの設備を効率の高いものにする。さらに太陽光発電でエネルギーを創ることで、消費エネルギーゼロを目指します。電力を100%太陽光発電でまかなえる場合をZEH、75%の場合を「Neary ZEH(ニアリーゼッチ)」と呼びます。

資料9

 ZEHにはいくつか種類があります。「ZEH+(ゼッチプラス)」は普通のZEHに加え、エネルギーを見える化したシステムや、ZEHよりも高い断熱性能、電気自動車の充電などが可能な住宅で、ZEHよりも補助金が多くなります。(資料9)

 また、雪が多い地域などで、太陽光発電の導入が難しい住宅もあります。その場合は、太陽光発電がなくてもZEHとして認めようということで「ZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド)」と定義し、補助を出すというという取り組みも行われています。

資料10

 ハウスメーカーや設計事務所、工務店など住宅をつくる側の制度として、「ZEHビルダー/プランナー制度」があります。(資料10)

 2020年度までに供給する新築注文住宅の過半数をZEH化することを宣言した事業者を「ZEHビルダー/プランナー」として登録し、マークを配布しています。登録申請者数も増えてきていて、ホームページ上で紹介されています。

資料11

 ZEHの認知拡大のため、BELS(ベルス)という制度と連動したZEHマークを作成しています。BELSは省エネルギーの性能を第三者機関によって評価し、ラベルの星の数で表示します。このラベルにZEHマークを併記し、パンフレットに載せるなどして、PRを図っています。(資料11)

 2020年9月末時点で、BELSの認証を受けた住宅は約12万件、そのうち約7万件がZEHやゼロエネルギーの住宅です。

資料12

 経済産業省、国土交通省、環境省の三省が連携したZEHの推進も行われています。主に、戸建は環境省、経済産業省は集合住宅、工務店など事業者には国土交通省が補助を行っています。国土交通省は、ZEHよりもさらに高いレベルのLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅に対して支援を行うなど、さまざまな補助制度があります。(資料12)

資料13

 さらに「ZEH+R強化事業」という補助事業があります。「ZEH+R」はZEHの性能に加えて、太陽熱を利用した給湯システム、燃料電池、発電した電気を貯める蓄電設備の3つのうち、いずれか一つが加わった住宅のことで、ZEHやZEH+と同様に補助金が交付されます。(資料13)

資料14

 国では現在、ZEHを増やしていくためのロードマップを検討しています。(資料14)

資料15

 課題の一つに、「コミュニティZEH」があります。住宅1棟ずつではなくエリア全体で、電気やエネルギーをお互いに融通しながら、ゼロエネルギー化を目指そうという動きです。(資料15)

資料16

 集合住宅についてもゼロエネルギー化を目指すことが検討されています。集合住宅版のZEHは、マンションのMをつけて「ZEH-M」と定義しています。性能の評価を住棟全体で行うか、各住戸ごとで行うかは、見解が分かれています。(資料16)

資料17

 ZEH-Mの普及を図るため、ZEHの集合住宅を手がける事業者を「ZEHデベロッパー」として登録する、「ZEHデベロッパー制度」が定められ、補助事業もスタートしています。(資料17)

資料18

 お手元の「なるほど省エネ住宅」というパンフレットで、省エネ住宅の特徴について復習してみたいと思います。(資料18)
なるほど省エネ住宅」(国土交通省ホームページ)

 省エネ住宅を考えるうえで大事なのは、断熱性・気密性です。外気の影響を受けやすい壁・床・天井の断熱がポイントです。

資料19

 図は住宅と屋外の熱の移動を示したものです。夏は外から室内に熱が入り、冬は室内から外に出て行くことがわかります。(資料19)

 夏、室内に入ってくる熱が最も多いのは、開口部(窓)の73%です。冬、外に出て行く熱も開口部が58%で、季節を問わず、開口部が最も熱の出入りが多くなっています。

資料20

 熱の出入りを少なくする方法として、軒を大きくして上からの日射しをさえぎることと、断熱サッシが考えられています。日本の窓はアルミサッシが使われていることが多いのですが、樹脂製や、アルミと断熱材を組み合わせたものなど、新しい断熱サッシが増えています。(資料20)

資料21

 住まいの断熱は、例えるなら保温ポットのようなものです。これまでの家は、時間がたてば熱が逃げていく「ティーカップ」のようなものでしたが、断熱性能が高い住宅の場合は、ポットのように熱が逃げにくくなります。(資料21)

資料22

 住宅の設備は、なるべく効率の高いものを選ぶことが大切です。最近はLED照明、省エネ性能の高い家電や給湯設備が多くなっています。太陽熱を利用した温水設備、家庭用蓄電池の設置も有効です。(資料22)

 太陽光発電は、一般的に4kwh〜5kwhのものを導入すれば、通常ゼロエネになると言われています。

資料23

 また、寒冷地と温暖地で光熱費は大きく違います。北海道と東京で、これまでの住宅・一般的な省エネ住宅・高度な省エネ住宅の年間の光熱費を比較しました。東京の場合、これまでの住宅では約28万円だった光熱費が、ZEHにすると約16万円まで下がっています。(資料23)

資料24

 住宅の断熱性能の違いは、体感温度の差となって表れます。同じ室温20℃でも、断熱性能の低い家では壁、床、天井の表面温度が低くなり、そこからどんどん熱が奪われていきます。結果、体感温度は約15℃となり寒く感じます。一方、断熱性能の高い家では、表面温度は約18℃、体感温度は約19℃となり、快適に過ごすことができます。(資料24)

資料25

 サーモグラフィ(熱画像)カメラで、断熱リフォームの前と後を撮影し、室内の温度分布を比較した写真です。冬は表面温度が高くなり、夏の場合は表面温度が低く抑えられる効果があります。(資料25)

資料26

 断熱性能は健康とも関わりがあります。断熱性能の高い住宅では、アレルギー性の疾患や循環器系の疾患の発症率が大きく下がることが報告されています。(資料26)

資料27

 冬によく聞かれる「ヒートショック」も、室内の温度が大きく関わっています。リビングルームや寝室が暖かくても、浴室や廊下など他の場所の温度が低い状態だと、熱い湯舟との温度差でヒートショックが起こりやすくなります。(資料27)

 それをなくすためには、家の中を一定の温度に保ち、温度の分布をなるべく少なくすることが重要です。

資料28

 「ベターリビング」という団体が発行した「健康に暮らすためのあたたか住まいガイド」によると、住宅の温度が低いと、血圧が高くなる傾向があるということです。(資料28)
あたたか住まいガイド」住宅における良好な温熱環境実現推進フォーラムホームページ

資料29

 起床時に寝室の温度が低いと、通常よりも血圧が上がりやすくなります。室温が10℃低いと血圧が4㎜HG、足元の室温が1℃下がると1㎜HG上がるという調査結果がでています。(資料29)

 また、入浴中の事故も多くなります。特に「冬季入浴時刻帯における居間、廊下、脱衣室・浴室の温度差」があるとリスクが高くなります。

 こうした疾患や事故を防ぐため、WHO(世界保健機関)が定めている「住宅の健康ガイドライン」では、室内温度を18℃にすることを推奨しています。家のすべての場所を18℃にするためには、高い断熱性能が必要になります。

資料30

 私たちの研究で、住宅の省エネルギー改修のシミュレーションを行いました。グラフは日本国内に約5,000万戸の住宅があるという想定で、築年数と省エネ基準の関係を調べたものです。(資料30)

 現行の省エネ基準よりも断熱性能の劣った住宅が、築20年〜35年で多くなっています。それ以前に建てられた住宅は省エネ基準ができる前のもので、断熱材が入っていないことが多く、改修よりも建て直した方がいい場合も考えられます。そこで改修の対象を、おおむね築20年〜35年の断熱材の入った2階建て住宅とし、次の2つのケースを想定しました。

A:高齢の2人世帯。1階を中心に生活しているため、1階をメインに改修する。
B:子育て世帯の4人家族。1階・2階とも改修する。

資料31

 シミュレーションをした1階部分と2階部分の標準プランです。Aのケースは1階部分のみ、Bのケースは2階にも手を加えます。(資料31)

資料32

 室内の温度と、健康を害するリスクについての調査も行いました。(資料32)

資料33

 このグラフは、40歳、46歳、65歳、75歳の男性の血圧と、室温や断熱性能との関係を示したものです。年齢を重ねるごとにリスクは高まりますが、断熱性能や室温を上げることでリスクが抑えられています。こたつや電気カーペット、開放型暖房(ファンヒーター等)などで部分的に暖めるよりも、部屋全体を暖める方が効果が高くなっています。(資料33)

資料34

 既築と新築、断熱回収をした場合を比較すると、やはり断熱性が高い方が起床時の収縮期血圧が下がります。高気密・高断熱な家を作ることが、10年後・20年後の健康を害するリスクを抑えることにつながります。(資料34)

 一般に、年齢が高くなると血圧も高くなりますが、住宅の温熱環境が改善されると、血圧の基準値が高血圧に達する年齢が遅くなります。つまり、健康でいる時間が長くなるということです。寒い家では、高血圧になるリスクがリスクが増すのです。

資料35

 65歳の男性と75歳の男性で、暖房運転時間を比較した場合、断熱性能が同じでも、就寝中に18℃で暖房をし続けると、血圧の上昇が抑えられました。(資料35)

 断熱改修の効果は、窓だけ、窓と床、壁や天井も改修した場合を比較しました。改修箇所が増えるごとに、血圧の上昇が多少抑えられました。それほど顕著ではありませんが、良い結果が出ています。

資料36

 エネルギーの消費を見てみましょう。断熱性能が向上すると、暖房用のエネルギー消費は抑えることができます。二人世帯の場合、就寝中の暖房でエネルギー消費が多少増えますが、断熱性能の向上によって削減されます。(資料36)

資料37

 暖房用エネルギーの消費量と、起床時の収縮期の血圧の関連を調べたものです。断熱性能が高いと、エネルギーの消費量は減り、血圧の上昇が低く抑えられます。適切に暖房を使えば、エネルギーの消費が多少増えても、血圧は高くならずに済むということが分かっています。(資料37)

資料38

 夜間頻尿、過活動膀胱には、就寝時間帯の室温が影響すると言われています。室温が12℃〜18℃未満になると、室温18℃以上の場合に比べて、夜2回以上トイレにいくリスクが1.61倍に、12℃未満になると3.01倍に増えるという統計結果が出ています。暖かい部屋で過ごしてから寝る場合と、寒い部屋で過ごしてから寝る場合では、前者の方が夜間トイレに行く回数が減ることがわかっており、歳を重ねるごとにその傾向が顕著になります。室温を一定に保つことが重要です。(資料38)

資料39

 室温と湯船の温度の関係を示したグラフです。居間と脱衣所がどちらも18℃未満の場合、湯温を熱めにする傾向が見られます。寒さを感じると、風呂でしっかり温まろうとするからです。室温の低い場所から急に熱いお湯に入ると、血圧が急降下しヒートショックにつながります。浴槽の温度は居間や脱衣所の温度と関連があるということになります。(資料39)

資料40

 このような危険入浴は、居間と脱衣所の温度を高く設定することで避けられます。(資料40)

資料41

 室温は肩こりや腰痛とも関係があります。居間と寝室の温度が18℃未満の場合、肩こりを訴える割合が18℃に比べて3.2倍に増えます。腰痛も同様に2倍になるという結果がでています。(資料41)

資料42

 居間・寝室の温度と、肩こり・腰痛の関連を示したグラフです。しっかり暖房を使い、断熱性能が一定程度ある家であれば、肩こり、腰痛のリスクは下がります。(資料42)

資料43

 省エネ改修をした場合のコストについてです。左のグラフはエネルギー消費量と改修箇所、暖かさの関係を示しています。改修箇所が増えると、エネルギーの消費は減ります。(資料43)

 右のグラフは、コストと改修箇所、暖かさの関係を示しています。当然、改修箇所が増えればコストが増えていきます。

 配布した「なるほど省エネ住宅」に、省エネ住宅に適合させるときの試算が掲載されています。新築は約87万円、リフォームの場合は約231万円となっています。

資料44

 東京都はCO2排出量を2000年比で2030年までに30%削減するという目標を掲げ、「東京ゼロエミ住宅」というコンセプトの省エネ住宅を提案しています。国の補助金と合わせ、東京都独自の補助金も用意されています。(資料44)
東京ゼロエミ住宅導入促進事業」(クールネット東京ホームページ)

資料45

 東京都は、東京ゼロエミ住宅が普及し、住宅の環境性能が上がることで、高性能な建材・設備の市場価格が低下し、より多くの人が環境性能の良い住宅を選択できるようになる、という好循環を目指しています。(資料45)

資料46

 ZEHに関する最近の国の動きです。ZEHの数は増えていますが、まだ目標値には届かない状況です。新築注文戸建の場合、ZEHの供給戸数は増えているものの、全体平均は20.5%と半数に達していません。ハウスメーカーではZEHを標準仕様にする動きが加速し、住宅の8割がZEHというメーカーもあります。しかし、一般工務店はまだまだ十分ではないという状況です。(資料46)

 建売住宅は価格の上昇を抑えるため、断熱性能の強化や、高効率な設備の導入が難しい傾向があります。また、賃貸アパートは、断熱性能や設備が不十分な場合が多く、問題視されています。

資料47

 国は、このような住宅の性能も向上させるため、注文住宅、賃貸アパート、建売住宅、それぞれで対象事業者を選定し、エネルギー消費量などの目標達成を求めています。(資料47)

 アフターコロナ・ウィズコロナの中で、住宅のあり方も変化しています。在宅勤務が増え、住宅のエネルギー消費が増えてきています。住宅における2020年8月の電力消費量が、1年前に比べて2割ほど増えたという調査結果もあります。

資料48

 太陽光発電の設備がある家では、ちょうど発電する時間帯に家で働いているため、発電する電気をそのまま使う「自家消費」が増えました。コロナが収束しても、この働き方は続くと思われますので、ZEHのメリットも大きくなると考えられます。(資料48)

 また、太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が終了すると、買取価格が今までより下がる可能性があり、この点からも自家消費を増やそうと考える方が増えています。

資料49

 事業者に対して、ZEH導入の課題についてヒアリングをした結果です。ZEH導入の課題で最も多いのは「顧客の予算」です。ZEHにすると太陽光発電などの初期投資費用がかかります。また、何年で投資回収できるかも気がかりです。次に多いのが「顧客の理解を引き出すことができなかった」です。(資料49)

資料50

 建売戸建住宅におけるZEH普及状況の低さも問題です。2019年度に建てられたZEHは約5万9,000戸ですが、そのうち建売戸建住宅はわずか3.2%。建売住宅における標準仕様のレベルアップ(ZEH化)が求められています。(資料50)

資料51

 今後は、消費者に対するZEHの認知度の向上、一般工務店がZEHに取り組みやすい環境を整えることが必要です。住宅の購入を検討している方はZEHという言葉を知っていますが、そうでない方は知らないことも多いので、しっかり皆さんに知っていただきたいと思います。(資料51)

資料52

 エネルギー消費や光熱費だけではない、健康、安心安全といった副次的な効果がZEHにはあります。新築住宅だけでなく、既存住宅の断熱リフォームも重要です。住宅全体のリフォームが難しければ、部分断熱でも十分効果が得られます。(資料52)

 働き方や住まい方が変化する中で、今後ZEHをさらに普及させていきたいと思います。

 ご参加いただいた皆さま、秋元講師、ご協力いただいた多くの関係各位に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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