区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

平成30年度 環境月間講演会 当日レポート

どう向き合う? 地球温暖化

期日:平成30年6月3日(日)
時間:午前10時~正午
場所:練馬区役所地下多目的会議室

概要


講習会全体の様子

こどもエコ・コンクール
受賞作品展示の様子

ねりねこ☆彡・ねりこんvvも
来場者をエスコート

参加記念品

 地球温暖化を食い止めるため、世界はやっと結束して「パリ協定」を発行させましたが、地球温暖化が止まったわけではありません。豪雨や洪水、熱波、干ばつ、スーパー台風などの異常気象がますます深刻になり、もはや待ったなしの状況です。その矢先、トランプ大統領の登場で、視界が一気に不透明になってきました。

 地球温暖化は今どこまできているのでしょうか?
 異常気象はどうすればとまるのでしょうか?
 その災害にどう備えればいいのでしょうか?
 私たちはどのようなエネルギーをどう使い、またどのように暮らしていけばいいのでしょうか?

 地球温暖化の最新情報をお伝えしつつ、今後の在り方をご講演いただきました。

 今回の講演会は108名の方に受講いただきました。エントランスでは、ねりねこ☆彡・ねりこんvvのマスコットキャラクターが名刺を配り来場者を出迎え、講演会場には、開始の30分以上前から来場者があり、環境への関心の高さが伺えました。

 また、会場の後方では、第7回こどもエコ・コンクールの受賞作品が展示され、多くの来場者が熱心に眺めていました。

 アンケートに答えていただいた方には「カード型ソーラー電卓」をプレゼントしました。

主催者あいさつ


横倉 尚 会長

ねり☆エコ 横倉尚会長の挨拶

 いよいよ東京も梅雨入り発表されました。例年より早い梅雨入りで、身近なところで気候の変化を実感しています。梅雨明けも早くなりそうですね。この気候変動は、後戻りするような変化ではないと言われております。環境省は、毎年6月の1か月間を「環境月間」と位置付け、環境省、東京都と連携し、練馬区でもさまざまな環境についての啓発活動を行っています。

 環境の日は、1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められたものです。国連では、日本の提案を受けて6月5日を「世界環境デー」と定めています。日本がこのような提案をしたということは、そう沢山はありません。これを受けて日本では、6月5日を祝日にしようという意見も出ています。7月に海の日があり、8月に山の日があります。祝日がないのは 6月だけということです。どうするかは意見が分かれていますが、「世界環境デー」を提案した日本が、環境月間を契機として地球温暖化について考え、世界に誇れるような活動につながれば良いと思います。

 本日の講演では、私たちがどのように地球温暖化について対応していけばよいかを、一緒に考えたいと思います。少しでも皆さんのお役に立つことができれば幸いです。

講演「どう向き合う? 地球温暖化」


室山 哲也 氏

講師:室山 哲也(むろやま てつや)氏
NHK解説委員/日本科学技術ジャーナリスト会議副会長/大正大学客員教授/東京都市大学特別教授


資料1

 オックスフォード大学が2015年に発表した「人類滅亡、12のシナリオ」という論文があります。それには核戦争、パンデミック(新興感染症)…など、人類を取り巻く様々な危機が書かれていますが、一番最初に書かれているのが「気候変動」です。(資料1)

 今、地球がおかしいと言われていますが、その一つとして地球温暖化、正しくは温暖化による気候変動が、深刻になっています。かつて放映された番組で、気候変動がもたらした現象の一例をご覧ください。これは、台湾で2010年に実際に起きたことです。

(500人の命を奪った「深層崩壊」の現場を見せる)

 地球温暖化の影響で水が蒸発して循環が活発化するために、雨が降る場所では豪雨になり、土砂崩れが起きます。これまでは「表層崩壊」という、表面だけの土砂崩れが起きていたものが、今では山林の開発が進み、山が荒れていることもあり「深層崩壊」が起きているのです。これは温暖化というより、気候変動による災害の現れ方です。現れ方が複雑になり、いろいろな形で現れてくるのです。


資料2

 「地球温暖化」とは、地球の平均温度が上昇するということです。ただし、どこでもすべて熱くなるのではなく、逆に寒くなる場所もあるのです。地球全体の平均気温が底上げされ、水の蒸発・循環が活発化するために、さまざまなことが起きます。ですから、「温暖化が引き起こす気候変動」という言い方が正しいと思います。(資料2)


資料3

 2014年に行われた「IPCC5次報告会議」では、世界中の科学者や政治家が集まって報告書を出しました。最初は分からなかった、気候変動のメカニズムが分かるようになり、世界中の科学者のほとんどがIPCCの主張を認め、世界各国で深刻に捉えられるようになってきています。(資料3)


資料4

 その内容は、地球の平均気温が上昇/温室効果ガス濃度も上昇/原因は人間活動(95%の確率)/気候変動はすでに始まっている(異常気象、北極海氷の消滅、サンゴ縮小、熱帯生物の北上、農作物への影響、海の酸性化、生物の絶滅…)などで、これからさらに深刻化するとされています。(資料4)

 大半の科学者の主張をまとめると、地球温暖化は事実としてあり、温度も温室効果ガスも上昇している。その原因は、95%以上の確率で人間活動であるとされています。IPCCの主張に見られることは、全て気候変動の始まりだと言うことができ、さらに深刻化するだろうとされています。


資料5

 地球温暖化のサイクルとしては、まず地球全体の温度が上がるために水が蒸発し、雲ができて雨が降ります。これがまた蒸発し、雲が増えていく現象が起こります。ポイントとしては、雨が降る場所は土砂降りになり、雨が少ない場所は干ばつが起きるということです。全てが土砂降りになるのではなく、それがランダムに起きるために予測ができず、農業や人間活動が対応できない状態になるということです。気候の変動が、1万年単位でゆっくりと進んでいけば対応もできるのですが、ものすごいスピードで動くので、人間や自然が対応できないわけです。(資料5)


資料6

 現在の異常気象というのは、世界中のデータで見れば、寒波、熱波、大雨、洪水、台風、干ばつなど、地域によってばらつきがあり、暑いところは非常に暑く、寒いところは非常に寒いというのが特徴です。(資料6)

 20世紀、地球は「無限」だと信じられていました。海は広く、何をしても自然にきれいにしてくれると思っていましたが、当たり前のことですが調べていくと、地球は「有限」であるということが分かってきました。


資料7

 各国における人間活動の指標として、「二酸化炭素排出量」が示されています。1990年には、アメリカなどの先進国は相当な量を排出していましたが、現在では中国が1位で、アメリカは2位です。日本は6位くらいですから、日本が熱心に温暖化対策をしても仕方がない、という意見もあります。これまで途上国とされていた国の排出量がどんどんと増えてきています。「今の温暖化の原因は、先進国が豊かになろうとした結果である」というのが、途上国の言い分です。途上国にも豊かになる権利がある、今さら二酸化炭素を出すなと言われても、電気さえ通っていない村が未だにあり、自分たちだって豊かになりたいのだから仕方がないというわけです。(資料7)

 発展途上国としては、お金持ちのアメリカやヨーロッパは勝手なことを言っているように聞こえるのでしょう。では、今後の世界の平均気温の予測はどうでしょうか。


資料8

 2つのシナリオが考えられます。これから真剣に温室効果ガス対策をしたとすると、排出の大幅削減が見込まれ、2100年には気温上昇が「+0.3~1.7℃」で抑えられる可能性があります。一方、いま以上の対策をしなかった場合、2100年には最大で「+4.8℃」の上昇が予測されます。一つの目安として、「産業革命の時代と比較して+2℃を超えるとまずい」と考える科学者が多いようです。この+2℃の範囲で抑えることは国際的な合意事項となっています。(資料8)


資料9

 例えば+4.8℃の上昇ではどんなことが起きるかというと、海面上昇が起きて水位が最大82cm上昇すると予測されています。82cmというと、日本などの先進国では堤防などの対策を講じることができますが、途上国では経済的に難しいため、洪水や浸水、浸食に見舞われ、それに加えてスーパー台風による高潮などが来れば、相当な被害が予想されます。海面上昇がどの程度の影響を及ぼすかというと、環境省によれば、海面が60cm程度上昇すると、日本の砂浜の85%が消えてなくなるとされています。これよりも大きな海面上昇が、世界規模で起きるのです。堤防を作ればいいという話もありますが、その財源はどうするのかなど、問題はたくさんあります。(資料9)


資料10

 また、北極海の氷が夏場になると、だんだんなくなっていることも深刻です。夏場の氷が変質してきており、これまでは「多年氷」といって、溶けきらない氷に上乗せして新しい氷ができていたのが、2012年には「一年氷」といって、1年限りの氷になってきました。この状態が続くと、今世紀半ばには夏の北極海の氷が消滅するとも言われています。(資料10)


資料11

 ざっくり言うと、世界のほぼ全域で高温化が進むと、中緯度と熱帯の地域では極端に雨が降り、もともと乾燥している地域は水が不足してカラカラになります。特に、乾燥した地域では水の争奪戦が始まるだろうということが、科学者のレポートに書いてあります。農業においては、地球の温度が4℃上昇すると食糧が不足して、紛争が起きることが予想されます。水や食糧をめぐって紛争が始まり、弱い国への影響が大きくなります。(資料11)


資料12

 このように温暖化が進んで二酸化炭素が増え、気温や海面が上昇すれば、世界全体が深刻な事態になるというのが、IPCCの報告の骨子です。(資料12)


資料13

 地球温暖化と人間活動が合わさって、生物種が絶滅する危険性があるということも報告されています。実は今まで、生物の大絶滅は5回起きています。最近では6,500万年前の恐竜大絶滅です。それまでも1,000年に1種の頻度で起きており、いずれも原因は「自然現象」でした。今は、6回目の大絶滅が起きようとしています。原因は、「人間活動」です。推定では、1年に4万種ほどの頻度で絶滅しています。このようなことは初めてです。(資料13)

 新たに分かったこともあります。次のレポートをご覧ください。

(温暖化によって北極圏でメタン(温室効果は二酸化炭素の28倍)が、永久凍土から放出され始めた現場を見せる)

 温室効果ガスにはいろいろな種類があり、最も量が多いのが「二酸化炭素」です。北極圏の地表からどんどん出てきている「メタン」について、これまでは計算されていませんでした。温暖化は、どちらかというと、悪い方向へ進んでいる印象があります。

 ここで、一つ押さえておきたいのは、めちゃくちゃ頑張ったとしても、あるいは今のままだとしても、「最初の20年くらいの気温上昇はそう変わらない」ということです。どちらにしても、温暖化は進みます。ですが、2100年に生まれてくる子どもたちの世界は全然違うわけです。これが、温暖化問題の特徴の一つです。すぐ目の前でいろいろなことが起きるわけではないので、あまり実態が分かりません。ですが、僕たちの子どもや孫、ひ孫といった世代がどのような社会に生きるべきかと考えると、我々の世代が、今、何をなせばいいのかが問われていると僕は思います。これは、子どもや孫たちとも話さなければいけないテーマです。我々だけではどうしようもないので、これからの教育をどうするか、といったことも考えていく必要があります。

 温暖化対策は、「苦しいけど頑張れ」というのでは、とても続かないと思います。取り組むことで何か良いことを生んでいく、そして幸せを感じるような価値観の転換になっていかないと、長続きしません。本音と建て前で、「わかっちゃいるけどやめられない」ということです。本音の部分で、「やればやるほど楽しい」と思えるようにならないといけません。この問題は、そういう意味で教育とも深く関わってきます。

 地球温暖化のおおもとの原因は何かと考えますと、人口爆発の問題があります。人類が生まれてしばらくは増加が横ばいでしたが、産業革命以降は増加の一途をたどり、いわゆる人口爆発を招いています。


資料14

 「エコロジカルフットプリント」という、人間が生きる上でどのくらいの面積が必要かという指標があります。それによると、2010年現在の人類には、地球1.5個分が必要だとされています。オーバーしている0.5個分は、森林を伐採するなど、地球に内在している資源に手を付けていると考えられます。日本人と同じ生活をするには地球2.3個分が、アメリカ人と同じ生活をするには地球4個分も必要です。日本人やアメリカ人は、地球資源を浪費していながら、「地球環境を守れ」といっていることになります。(資料14)


資料15

 人口爆発は、様々な地球規模の危機を作りだしています。人口爆発の影響によって大気汚染や水質汚染などの環境汚染が起こり、森林が消滅し、生物種の絶滅も起きています。そして、エネルギー不足や食糧不足が起き、地球温暖化が起きています。つまり、地球温暖化は人口爆発による影響の一つであり、病気で言えば症状の一つでしかないわけです。地球を冷やせば解決するという簡単なものではなく、「地球と人間の関係性をどうするのか」という文明の問題なのです。(資料15)


資料16

 2016年に「パリ協定」が発効しました。内容としては、2020年には全ての国が参加して温暖化対策をするというもので、米中も共同宣言を出して頑張ることを表明しました。アメリカや中国などの大国が、協力し合って頑張ろうと言った背景には、利益があると見込んだ事情があります。アメリカは天然ガス(シェールガス)の埋蔵量が多く、これまではエネルギー輸入国だったのが、輸出国に転じました。天然ガスは石油や石炭に比べて二酸化炭素の含有量が少ないため、環境には良いのです。環境問題に取り組むことが、自国の利益に結び付くというわけです。中国は、PM2.5に見られるように大気汚染が激しい国です。これまでのように、石炭を燃やし続けていてはどうしようもなく、何とかしなければという事情もあったのです。しかし、きっかけはどうであれ、パリ協定は良いことであるということでここまで来ました。2020年までに全ての国が参加して、温暖化対策を行うことを目指しています。(資料16)


資料17

 パリ協定の内容としては、平均気温の上昇を2℃未満、できれば1.5℃に抑えるというのが各国の合意事項です。人類が排出した二酸化炭素量に比例して温度が上昇しているということが最近分かってきました。少し前のデータですが、二酸化炭素排出量は、すでに2兆トンを超えており、排出限度とされる2兆9,000億トンには残り1兆トンしかありません。このペースだと、あと20~30年でコップの水があふれ出ると言われています。それを避けるためには、2050年の段階で二酸化炭素を40~70%削減し、2100年には0%からマイナスにまで削減するということです。マイナスとは、排出した二酸化炭素を集めて、それを地中などに埋めるということです。そうすれば、計算上では温度上昇2℃未満に抑えられるというのが、IPCCの主張です。(資料17)


資料18

 そのためには、今世紀前半には温室効果ガスをゼロにしなければなりません。さらに、各国とも削減目標を5年ごとに更新して提出しなければなりません。とは言え、もう温暖化は進んでいますので、すでに発生している災害への対策を講じていかなければなりません。適応策です。「温暖化に強い稲を作る」なども一例です。そして、先進国が途上国を支援することが盛り込まれ、それぞれの国が計画を提出しました。(資料18)

 しかし、もし、全ての国が計画通りに行ったとしても、2℃未満に上昇を抑えることはできないことが分かりました。今後さらなる深堀が必要です。

 また、《温暖化》現象に対しては、様々な懐疑論があります。それをご紹介しましょう。

 

〈シナリオ1〉太陽活動においては温暖化ではなく低温化である。

 よく挙げられるのは、17世紀にテムズ川が凍結したほどの寒冷化現象(マウンダー極小期)です。これは太陽活動が減り、寒冷化が起きたのです。ところが、環境研のデータによると、現象が起きた前後の、地球の平均気温差は、「−0.1~0.2℃」低いだけなのです。温暖化の幅は「+4.8℃」。桁がちがいます。


資料19

 太陽活動と、地球の平均気温の変化を見ても、ここ最近では、相関しなくなってきているのです。(資料19)

〈シナリオ2〉温暖化はもう止まっている。


資料20

 二酸化炭素の排出は増えているのに、地球の平均気温は、ここのところ高止まりしているではないかという意見です。(資料20)


資料21

 東京大学の研究によれば、1960年から現在までで、海の深い所にまで温度上昇が及んでいることが分かりました。1980年頃は太陽の影響により海面の温度が上がっても、海底は冷たいままでした。ところが1990年以降は、海底も温度が高くなっていることが分かってきました。海水には縦方向の循環もあるので、海が温暖化のエネルギーを深い所まで引き込んで、影響を吸収しているのです。今後は、さらに加速すると考えられています。(資料21)


資料22

 実際に、2017年2月~ 9月の平均気温は過去30年よりも、すでに0.5℃高いとされています。(資料22)

〈シナリオ3〉温暖化は良いことだ。


資料23

資料24

 米の収穫量も増えるし、植物も生えるから良いではないか、という説です。確かに、部分的には正しいです。穀物生産性については、気温が2℃を超えるあたりまでは、部分的なエリアで生産性が上がります。ですが、2℃を超えると減少に転じ、地球規模で悪いことばかり起きます。洪水・暴風雨、干ばつ・森林火災、サンゴの白化から死滅、水不足、最大30%の種が絶滅危機、穀物生産性の低下…など、たくさんあります。森は二酸化炭素を吸って酸素を出して温暖化を食い止めてくれていましたが、逆に温暖化を促進するようになってしまうということです。(資料23、24)


資料25

 今後、温暖化は単なる科学的現象から、政治経済問題に発展することが予測されます。たとえば、温暖化にともない海水の温度が変化し、魚が移動すると、魚が獲れる海域と獲れない海域が分かれてきます。(資料25)


資料26

 温暖化の問題は地域によりばらつきがあり、国益が相反する特徴があります。これを乗り越えて「地球益をどう得るか」にかかっていると言えるでしょう。(資料26)

 北極海でもそのような現象が起きています。北極海の氷が溶けることで、北極海航路が出現しようとしています。航路の短縮は、お金も燃料もかからないから温暖化は良いことではないか、というのです。たしかに部分的にはそうです。また、北極圏には、膨大な化石燃料があります。海底を掘ったら大儲けというようなことになるかもしれません。


資料27

資料28

資料29

 北極海から氷がなくなることを、経済的なチャンスと捉えることもできます。しかし、温暖化で氷が解け、そこに埋もれている化石燃料を採掘し、そのまま燃やせば、温暖化の悪循環になります。「これでいいのか」という視点も大切です。(資料27、28、29)

 地球温暖化対策とは、「地球益と国益のバランスをとること」が重要なのです。国益を考えずに地球のためだけの取り組みをして、国がつぶれては仕方がないし、国益のみに走れば地球がおかしくなり、結局は国益にも反します。


資料30

 今後は二酸化炭素そのものを減らす「緩和策」と同時に、被害を減らす「適応策」としての取り組みをしなければならない時代になりました。緩和策としては、再生可能エネルギーの利用、また高効率火力発電や二酸化炭素の回収・貯蔵などの技術を取り入れるということです。また、天然ガスや水素など低炭素エネルギーへの転換です。原子力発電もこの中に含まれるかもしれません。原発は、稼働している間は二酸化炭素を出しませんので、温暖化という観点であれば優れたエネルギーと言えますが、災害が起きた時には大変深刻な環境被害をもたらすことになります。適応策としては堤防をつくったり、品種改良をしたり、感染症対策をするなどして被害を減らすことです。そして、2100 年には温室効果ガスの排出をゼロ、あるいはマイナスにすることを目指しています。(資料30)


資料31

 アメリカ国内では、温暖化対策に消極的なトランプ大統領に反発している州や都市、企業が多数あり、温暖化対策の続行を求める声が高まっています。「WE ARE STILL IN」―私たちはまだ温暖化対策のなかにいる―という声をあげ、自治の力強さを感じます。(資料31)


資料32

 一方、日本ではどんな対策をするかというと、2030年までにマイナス26%まで削減、2050年までにマイナス80%まで削減するという目標を掲げています。(資料32)


資料33

 これを実現するため、2030年の電源構成計画が発表されています。内訳として、石炭:26%、天然ガス:27%、原子力:20~22%、再生可能エネルギー:22~24%となっており、石炭と天然ガスを合わせた53%は、二酸化炭素を排出するエネルギーです。原子力と再生可能エネルギーは、二酸化炭素を排出しません。これが実現すれば、経済産業省・政府は先の温室効果ガス削減目標を達成できると試算しています。(資料33)

 再生可能エネルギーは、重要なエネルギーです。日本は、陸地面積では世界の61位ですが、排他的経済水域も入れた海洋面積を入れると、世界で6位です。海は、様々な意味で、エネルギーを生み出す現場でもあるのです。

 例えば風力発電にしても、洋上発電にするとコストは高くなりますが、発電力は3割ほど上がります。もし、海を活用できれば、波力も使えるでしょう。海の温度差を利用して発電するなど、海のエネルギーを使うことができます。地熱エネルギーは世界で3位です。森林の占める率は先進国で3位です。


資料34

 このように、日本は自然エネルギー大国といえます。これまで見過ごされてきたものを掘り起こしていけば、温暖化対策の大きな助けになるでしょう。エネルギーの地産地消を進めていく必要があります。(資料34)


資料35

資料36

資料37

 また、水素社会の重要性を唱える専門家もいます。いまは水素を化石燃料から作っていますが、もしも水を風力発電で分解して水素を作ることができれば、エネルギーを作るときも使うときもCO2ゼロにすることができます。それが、水素社会です。水を太陽電池の電気で分解して、水素がどれくらいできるかといった実験が行われています。分解した水素をかき集め、燃料電池に入れれば電気ができます。そうして作った電気を公園の監視カメラなどで使い、どれくらいのエネルギー効率になるかを調べています。また、長崎の洋上発電では作った電気を島に運び、水を分解してできた水素を圧縮して、水素自動車などに生かしています。(資料35、36、37)


資料38

 世界全体で見て風が吹いているところに風力発電の設備を整え、水を分解して水素を作り、世界中へと運べば、いずれは中東でも石油などいらなくなるかもしれません。水素をどこの国で作るかという、これまでと全く違う政治状況が生まれます。(資料38)


資料39

資料40

 最近、中国が電気自動車重視の政策を発表しました。中国の自動車市場はパイが大きいので、これからは電気自動車でいったほうがいいのではないかという声が、日本の自動車産業で挙がっています。(資料39、40)


資料41

 ただし、電気自動車を走らせるために電気をどうやって作るのかが課題です。質の悪い火力発電で作った電気自動車では、走れば走るほど温暖化が進んでしまいます。ですから、良質な電気の作り方とセットで電気自動車が走るようにならなければなりません。エネルギーを「作って」「運んで」「使う」を全体で見ないといけないということです。(資料41)


資料42

 1970年代のアメリカでは「マスキー法」という、排気ガスを厳しく規制する法律ができました。当時、アメリカの自動車メーカーは強く反発し、達成は無理だと言いました。そこで、日本の企業である本田技研が、その規制をクリアするエンジンを開発しました。それが原点となり、日本は世界の自動車産業を席捲していったわけです。(資料42)

 日本人は、やればできるのです。力を持っているはずなのに、なぜ、今できないのかと思います。とにかく、日本人の得意なアイデアを発揮して、温暖化対策も前進できると私は思います。世界の先頭に立ってほしいと心から願っています。


資料43

 最後に、ある少女の演説を紹介します。1992年にリオデジャネイロで開かれた環境サミットで、セヴァン・カリス=スズキという少女が演説をしました。その内容がとてもすばらしく、世界は衝撃を受けました。この少女のメッセージは、世代を超えて考えさせられるものであり、地球温暖化を考えるうえでも大きな影響を与えました。(資料43)


資料44

 宇宙から見た地球をみてみましょう。地球を宇宙船に見立てて地球号とするならば、人間は環境の変化と折り合いをつけることが問われています。その一つが、気候変動です。地球が冷えればいいという話ではなく、もっと大元の、人間の生き方や文明といったことにまで入り込んでいかないと、本当には解決できないと思います。(資料44)

当日の資料はこちら(PDF)

 ご参加いただいた皆さま、ご協力いただいた多くの関係各位に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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