区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

平成29年度 事業者向け地球温暖化対策講習会 当日レポート

東京都の省エネ施策

期日:平成30年3月27日(火)
時間:11時30分〜11時50分
場所:練馬産業会館内 練馬産業連合会 集会室(豊玉上2-23-10)

概要


講習会全体の様子

 地球温暖化に対する国や地域の取り組みがますます重要になるなか、東京都も省エネルギー対策、再生可能エネルギーの導入拡大及び水素社会の実現に向けて目標を掲げています。

 それは2016年3月に新たに策定した東京都環境基本計画に基づいたもので、「2030年までに、東京の温室効果ガス排出量を2000年比で30%削減する」。また、「2030年までに、東京のエネルギー消費量を2000年比で38%削減する」というものです。

 その内訳は、産業・業務部門、家庭部門、運輸部門に分けられ、私たちの労働や生活に密着した領域で省エネに貢献することが求められています。

 今回は練馬区の産業振興を担う練馬産業連合会会員38名の方にご参加いただき、東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)の村瀬光一氏に、東京都の取り組みや企業の利益率アップにつながる省エネの具体的な対策についてご説明いただきました。

 参加者は企業の経営者の方々ということもあり、熱心に資料とスクリーンに視線を移したり、メモを取ったりと講師の話に耳を傾けておられました。

講習


村瀬 光一 氏

講師:村瀬 光一(むらせ こういち)氏
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)
技術専門員、エネルギー管理士、省エネ診断士
中小企業の省エネ診断、支援を数多く経験

はじめに

 本日は貴重なお時間をいただきまして、なぜ今、省エネが必要なのか、省エネ診断とはどのようなことをやっているのかということに加えて、東京都の省エネ施策についてお話しをさせていただきます。

 今から130年ぐらい前に工業化が始まり、それから人類はエネルギーを使い始めます。その結果、現在は130年前より0.8℃気温が上がっていると言われています。この影響で地球温暖化による気候の変動が起こり、さまざまな不具合が起こっていると言われています。

 このまま何もしないで、人類の繁栄とともにエネルギーを使い続けると、将来2.6~4.8℃気温が上がるだろうと言われています。これでは地球はやっていけませんので、これを0.3~1.7℃の上昇に収めようと、2015年12月にパリで開かれたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)において、協定が結ばれました。


資料1

 今、全世界がこれに向かって努力をしています。もちろん日本もこれに参加し、2013年から2030年の間に26%の温室効果ガスを下げるという努力を約束しています。(資料1)

 温室効果ガスは地球を取り巻いて、地球の熱を宇宙に発散するのを妨害しています。ガスにはフロンやメタンなどがありますが、その代表格が二酸化炭素です。この二酸化炭素の排出をなんとか抑えようと、努力が始まっています。

 では、世界でどの国がどれくらい二酸化炭素を排出しているかということですが、一番多いのが中国、次がアメリカ、日本は第5位です。日本は省エネの技術が進んでおり、みなさんも努力していますが、産業、GDPが大きいので1,189百万トンにもなります。

 また、東京は60.6百万トンで、これはギリシャ、オーストリア、フィンランド等の国に匹敵するほどの二酸化炭素を排出しております。これをなんとか減らそうと努力が始まっております。


資料2

資料3

 東京都の二酸化炭素排出状況を部門別に見ますと、産業部門、業務部門、家庭部門、運輸部門に分かれます。家庭と運輸部門を別にして、産業と業務部門を詳しく見ますと、原油換算した使用エネルギーが1,500kl以上の事業所を大規模事業所とし、それが約40%、1,300社くらいあります。それ以外に中小規模の事業所が約60%を占め、これが66万社くらいあります。

 大規模事業所は法的にも厳しい目標などを課されておりますが、中小規模事業所は自主的な省エネをやっていくということになっています。東京都は、こうした中小規模事業所を中心にいろいろな施策を行っております。(資料2)

 東京都はこれらの問題を解決するために、2016年3月に「東京都環境基本計画」をつくり、さまざまな産業部門別に温室効果ガス、つまり二酸化炭素を減らす、エネルギー消費量を減らすという目標を立てております。(資料3)

省エネルギーの効果・メリット

 地球温暖化防止のために二酸化炭素を減らす、二酸化炭素を減らすためには省エネをしていくのが、われわれにとって身近で一番大事なことです。これにはどんなメリットがあるのかをご説明します。

 まず先ほども挙げましたように、地球温暖化の防止に役立ちます。


資料4

資料5

資料6

資料7

資料8

 そして大事なのは、経営上のメリットとなるコスト低減、経営に直結するということです。私たちは今から10年前くらいに省エネ活動を始めまして、その頃は地球温暖化の防止ばかり言っておりました。今はコスト低減、経営上のメリットを強調してご説明しております。もちろん経営の効率化を図れば、業務も効率化します。

 それから、企業の社会的なイメージアップにもなります。例えば東京都では、非常に省エネの進んだビルを「低炭素モデルビル」として、ホームページ上で公表しております。(資料4)

 経営上のメリットについて詳しく見ていきます。省エネがどれくらいお得になるかを、経済産業省が示したデータがあります。年間電気使用量に1,000万円使っている事業所が、省エネをして10%削減すると、100万円儲かります。会社ごとに違うでしょうが、例えば100万円の利益を上げるには、利益率を5%としますと、約2,000万円の売り上げに相当します。

 さらに、売上の内訳を経費と光熱費に分けますと、省エネによって光熱費が減ることで、利益が上がります。こうした面で、省エネは会社の経営に大きく貢献すると私たちはご説明しております。(資料5)

 これらを実現するために東京都はいろいろな施策を実施しております。まずは、テナントビル向けの「グリーンリース普及促進事業」です。テナントとビルオーナーが一緒に省エネに取り組みますと、省エネをするための設備費用として助成金を出します。これは現在、第3回目までの募集を終えまして、平成30年度も2回募集をいたします。(資料6)

 それから「省エネ促進税制」というものです。これは法人事業税等から減免する施策です。東京都が指定している設備類を使いますと、法人税が減免されます。例えば空調機器を取り替えるときに、これが利用できます。よく「自分が使いたい機器が無いんじゃないの?」と言われますが、最新機器や日本の専門メーカー、大企業が売っている機器は、ほとんど入っています。(資料7)

 あとは最近始まった「地産地消型再生可能エネルギー導入拡大事業」です。いちばんポピュラーなものをひとつ紹介しますと、太陽光発電です。これについても補助金が出るようになっております。(資料8)

その他の東京都の省エネ支援策


資料9

資料10

資料11

資料12

資料13

資料14

資料15

資料16

資料17

 その他の施策ですが、ひとつは先ほども紹介した無料の省エネルギー診断です。私ども2名の専門家が企業にお伺いして、電気、ガス、水道等のエネルギーの使用状態をよく見させていただきます。その中から、いろいろな省エネの提案をさせていただくものです。

 さらに、東京都の助成金、補助金など東京都がお手伝いできるものについても詳しく説明いたします。

 今まで3,000件を超える実施件数があり、約80%の事業者が効果を実感されています。具体的な省エネの数値は、平均で電気使用量が16.5%、ガス使用量が26.1%、水道使用量が16.0%削減されました。(資料9)

 では、具体的にどういうことをやるのかについて、お話いたします。難しいことではなく、わりとポピュラーなものです。例えば、窓際の2灯用蛍光灯を3台消灯するだけでも、年間約1万円削減できます。(資料10)

 また、事務所の照明を区切った照明マップ(消灯マップ)を確認して、不要なところは消しておく、必要なところだけをつけるということで、年間約4万円貢献します。(資料11)

 ほかには、照度が非常に高い照明を間引きします。事例では照明器具の中に蛍光灯が4本、1,100 Lx以上の明るさがありました。これを2本抜いてみます。これは得に安全に問題なく、物理的に抜けます。こうしますと、642Lxの明るさになります。

 今、東京都で推奨している事務所での明るさは500Lxです。JISは750Lxを推奨していましたが、東日本大震災以来、それに幅を持たせて500~1,000Lxを推奨しています。ちなみに私の机は450~500Lxでして、何の不自由もなく仕事ができます。(資料12)

 効果が大きいということもあり、最近話題になっているのは、蛍光灯をLED照明に換えることです。資料では31台で7万円の省エネとあります。1台取り替えるのにだいたい2万円〜2万5000円です。31台ですと、60万円〜75万円で取り替えられます。これを7万円で割りますと、約10年です。みなさんが上手な使い方をすれば、10年未満で削減効果が出ます。このLED交換は効率も良く、普及もしております。ぜひ、これはお考えになったほうが良いかと思います。(資料13)

 次は空調設備ですが、みなさんの事業所で冬は何℃にしようなどと決めておられるかと思います。過ごしやすい温度で差し支えないかと思いますが、空調機の温度を1℃変えてみます。冬は1℃下げる、夏は1℃上げてみる。そうしますと、空調機のエネルギーが約10%削減できます。私たちの省エネルギー診断でも、空調機にどれくらいの電力を使っているか、これを1℃下げるとどれくらいのメリットが出るかをご提案します。(資料14)

 それから、空調機の使用時間です。これは最初に出社した人がスイッチを入れて、最後に残業が終わるまでつけるのではなく、ある時間からある時間まで、必要な時間で区切りましょうというものです。みなさんで話し合って、それをルール化するだけでも効果が出て、利益が上がります。(資料15)

 もうひとつ気を付けていただきたいのが、空調室外機の置き場所です。室外機は適した場所に置いていないと、性能を発揮しません。特に気を付けていただきたいのは、壁に室外機を取り付けておられる事業所ではなかなか点検がしにくいので、そういう所こそ特に対策が必要になってくると思います。(資料16)

 また、室外機も定期的に清掃をすると、非常に効率が改善します。これは専門家の方に見ていただき、掃除をしていただければ大丈夫です。これも考慮されると良いと思います。(資料17)

 このように初歩的なことをご説明しましたが、これ以外にもさまざまな省エネの相談に乗っております。私たちのホームページを見ていただきますと、省エネに関するいろいろなことが書いてあります。テキストもありますので、一度ご覧ください。

東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)
ホームページ
https://www.tokyo-co2down.jp/

当日の資料はこちら(PDF)

 ご参加いただいた皆さま、ご協力いただいた多くの関係各位に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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