区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

ねりまのエコ語り

#015|五十嵐 和代(いがらし かずよ)さん

練馬区地球温暖化対策地域協議会 監査
練馬産業連合会副会長
株式会社五十嵐商会 代表取締役社長

1961年創業の五十嵐商会は、従業員600人規模の廃棄物処理、警備、総合ビルメンテナンス等を行っている会社。2001年1月に2代目社長に就任。趣味は水泳。猫好き。練馬区出身・在住。
株式会社五十嵐商会

父の意志を引き継ぎ「食品リサイクル事業」へ参入

事業について教えてください。

 浄化槽の清掃業務からスタートし、建物清掃、廃棄物処理、警備、環境衛生、指定管理者などのサービスを提供する総合ビルメンテナンスを行っている会社です。20年前に2代目として社長に就任し、食品のリサイクル事業も始めました。

食品のリサイクル事業を始めた経緯は?

 当時制定された食品廃棄物の20%を肥料や飼料などにして再利用を目指す「食品リサイクル法」がきっかけでした。創業者である父が会社の付加価値になるという理由で、食品リサイクル事業参入を決意しました。当時、練馬区は環境都市宣言を行い、食品リサイクルにも前向きだったので、食品リサイクル事業の準備を始めましたが、その時に、父が倒れて入院し他界しました。食品リサイクルは、父の遺言として、私がやると誓って引き継ぎました。

 リサイクル工場の土地を区内で探したのですがなかなか見つからず、北区の浮間になりました。2002年2月に開業し、現在、練馬区の区立小中学校と保育園を中心に、福祉施設や区役所、北区の小中学校などの食品リサイクルを請け負っています。学校給食や職員食堂の食べ残し、調理場から出てくる生ごみをもとに肥料を製造し、全国に販売しています。

練馬区にある株式会社五十嵐商会の本社外観

北区にあるIGARASHI資源リサイクルセンターの外観

生ごみをリサイクルした肥料はどんな特徴がありますか。

 生ごみといっても、学校給食より出たものが主体なので、栄養満点です。塩分や脂の濃度が一定で、偏りがありません。父がよく「欲を出したらいけない。学校給食以外はあまり手を広げすぎないように」と話していたのですが、自分がやりだして意味がわかりました。塩分や脂の濃度が高いもので肥料を作ると、農作物が塩害を起こしてしまうからです。

 生ごみの70~80%は水分です。このため調整剤として米ぬかと、土壌菌である内城菌を混ぜ、発酵処理により肥料の原料に再生しています。製品名は『リヴァイブ練馬』、ペレット化した『練馬の大地』の2種類です。福岡のニラ、静岡のお茶、栃木のゴルフ場の芝など、利用者からは「発育が良い」「実なりが良い」「収量が上がった」などと高評価を受けています。『練馬の大地』は、例えば小中学校の菜園で使われているほか、練馬区内のJAの直売所でも販売されています。

リサイクル工場を見学させていただきました。施設内は清潔で、肥料は無臭でした。環境への配慮もされていますね。

 臭気対策として、収集運搬では住宅街を通るので、専用保冷車を使っています。発酵処理の際は、700℃の高温で乾燥脱臭処理をしています。生ごみを入れる容器は、自動車のバンパーと同じ素材の頑丈なリターナブル容器を使い、お湯で高圧洗浄します。このお湯には、貯めてある雨水も使うようにしています。施設内は、整理、整頓、清掃の「3S」と、定位、定品、定量の「3T」を心がけ、いつでも清潔に、ムダをなくすようにしています。

肥料は『リヴァイブ練馬』と『練馬の大地』の2種類を製品化

容器はお湯で高圧洗浄し、常に清潔を保っている

工場内は「3S」と「3T」が徹底されている

「3S」などの内容は、誰でもいつでも見られるように掲示

生ごみをコンベヤで運び粉砕する直前の様子

肥料を作るための機械

食品リサイクルの課題は販売先の開拓

環境省の中央環境審議会循環型社会部会食品リサイクル専門委員会のメンバーとのことですが、五十嵐さんはどんなことを提言していますか。

 メンバーは、行政の関係者や大学の研究者がほとんどです。私は事業者の代表として、「現場を見て、現場の声を聞いてほしい」と要望しています。「廃棄物をリサイクルしよう」と言うことは簡単ですが、リサイクルをした製品が、きちんと使われなければ全く意味がありません。

 事業者として、食品リサイクルの課題は「出口」です。肥料を作ってから、販売先を自分たちで確保しなければならない。これが一番大変です。例えば、農家でリサイクルしてできた有機肥料を使うように社会全体が推奨すれば、営業も少しは楽になります。食品リサイクルという一連の流れを作るために、事業者を後押ししてくれるような施策や予算を切望しています。

コロナ禍での業務の影響と販路拡大

コロナ禍で経営はどんな影響を受けましたか。またどう対応しましたか。

 ビルの警備や清掃については、コロナにかかわらず必要なことなので、影響はあまりありませんでした。ただ、マラソンやお祭りなどのイベントが中止となり、それらの警備の仕事が少なくなりましたね。廃棄物の処理運搬では、デパート、ホテル、オフィスのごみが減りました。

 新たに始めたことは、感染性廃棄物の収集運搬です。新型コロナウイルス感染症に係わるワクチンの接種会場から、使用済みの注射針やガーゼなどを収集・運搬したり、接種会場での案内や警備を手がけたりしました。

 コロナ禍でリモートワークが浸透し、小さいオフィスへ引っ越す企業が増え、不用となったオフィス用の家具や備品を買い取る企業が増えました。当社も古物商の許可を取得しているので、時々、売買を手がけています。廃棄せず、リユース(再使用)される社会となるのは良いことですね。

「ねり☆エコ」の活動への抱負は

 今年7月から「ねり☆エコ」の一般社団法人練馬産業連合会からの委員になられましたが、活動への抱負はありますか。

 以前、東京都環境保全協会練馬支部からのねり☆エコ委員として活動していましたので、今回で2回目です。練馬産業連合会は、約800社が加入する産業団体で、地域の産業振興や関係機関と連携した地域社会の発展に寄与する活動をしています。絵空事ではなく、現実味のある事業を提案して、区民の皆様と私共事業者が連携して、脱炭素社会に向かって取組んでいきたいです。

 具体的な考えはまとまっていませんが、関心があるのは、子どもへの環境教育です。子どもの時から、リサイクルに協力するのは当たり前だという感覚を持ってほしい。そのためにビンや缶、古紙など、リサイクル工場の見学は有意義だと思います。当社でも、小学校の子どもたちをはじめ、随時受け入れています。

モノを捨てずに生かす社会へ

個人的にエコの取り組みはされていますか。

 電気をこまめに消す、水は出しっぱなしにしない、食品や野菜は買いすぎないなど、生活の中でちょっと気を付けるようなことはしています。この程度ではありますが、自分にできることを一つでも二つでも、「これだったら続く」というものをやることが、個人の取り組みとして大切なのではないでしょうか。社会全体として、リユースできる仕組みがもっと必要だと思います。

(取材日:令和3年11月1日)

取材中の五十嵐さん

ページの先頭に戻る