ペットボトルは繰り返し使える循環資源へ

場所
サントリーホールディングス株式会社
お話を伺った人
サステナビリティ経営推進本部(地域共創)
地域課題ソリューショングループ担当部長
木村健一郎さん
サントリーの主なエコな取り組み
- ペットボトルの「ボトルtoボトル」水平リサイクルを推進する
- 次世代に向けた環境教育「ペットボトルリサイクル」「水育(みずいく)」
- 「サントリー 天然水の森」では、国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養している

創業以来の「やってみなはれ」「利益三分主義」精神
飲料大手サントリーホールディングス株式会社(以下:サントリー(HD))は、創業が明治32年(1899年)。鳥井信治郎氏が大阪市で鳥井商店を開業し、ぶどう酒の製造販売から始まりました。その後、国内初の本格ウイスキーに進出。ビール、清涼飲料水、健康食品、外食、世界初の「青いバラ」など、多角的に事業を展開しています。
その原動力は、失敗を恐れず常に挑戦する「やってみなはれ」の心意気。事業活動で得たものは、自社への再投資にとどまらず、文化活動、環境活動を通して社会貢献に力を注ぐ「利益三分主義」の精神も特徴的です。
環境に配慮するサステナビリティ(持続可能性)の取り組みとして、サントリーグループ(サントリー(HD)・サントリー食品インターナショナル株式会社)と練馬区は、ペットボトルのリサイクルに関して令和6年(2024年)3月に協定を締結しました。

練馬区とサントリーグループとの協定締結式の様子
プレスリリース
協定に基づいたペットボトルのリサイクルの取り組みを中心に、サントリー(HD)サステナビリティ経営推進本部(地域共創)地域課題ソリューショングループ担当部長の木村健一郎さんにお話を伺いました。

取材に対応してくださった木村健一郎さん
「ボトルtoボトル」水平リサイクルとは
サントリー(HD)のサステナビリティの取り組みのうち、「プラスチック」のリサイクルは重要な位置付けで、「水」と「温室効果ガス(GHG)」に並ぶ三本柱の一つです。グループが使用するすべてのペットボトルは、2030年までにリサイクル素材や植物由来素材に100%切り替え、石油などの化石由来原料の新たな使用をゼロにするという目標を掲げています。

サントリー(HD)の2030年サステナビリティ目標
その取り組みとして注目されているのが、ペットボトルの「ボトルtoボトル」水平リサイクルです。使用済みのペットボトルをリサイクル(原料化)し、新しいペットボトルに再生することを言います。

「ボトルtoボトル」水平リサイクル
[動画]「ボトルtoボトル」水平リサイクルって何?
これまでペットボトルは、食品トレーや卵のパック、作業服などペットボトル以外の製品へリサイクルされたり、焼却燃料として処理されたりしてきました。ペットボトルは一度別の素材にリサイクルされると、二度とペットボトルには戻れません。最終的に多くは焼却されてしまいます。
「ボトルtoボトル」水平リサイクルは、ペットボトルを資源として繰り返して使えるので、新たな化石由来原料を使わずに資源を循環することができます。そして、新たな化石由来原料からペットボトルを作るよりも二酸化炭素(CO2)の排出量を約60%(※)削減できるとされています。
※使用済みペットボトルからプリフォーム製造までの工程において、新たに化石由来原料を使用する場合との比較
[動画]「ボトルtoボトル」水平リサイクルは地球環境や地球温暖化防止に大切!
サントリーグループが「ボトルtoボトル」の技術を確立したのは、平成23年(2011年)のこと。翌平成24年(2012年)、国内飲料で初めて「サントリー烏龍茶」で実用化しました。
「リサイクルした容器の、衛生・品質面ではどうなのかの議論はありました。しかしながら、ゴミ問題が当時すでに顕在化していたので、チャレンジし甲斐があると取り組みました」
サントリー(HD)のペットボトルのサステナブル素材(リサイクル素材あるいは植物由来素材等)比率は令和6年(2024年)実績で58%と、すでに2本に1本以上となっています。業界平均の約3割(PETボトルリサイクル推進協議会「年次報告書2024」)を大きく上回っています。
「ボトルtoボトル」の流れ
「ボトルtoボトル」のリサイクルの流れはこうです。
①使用済みのペットボトルを回収し、リサイクル工場で粉砕・洗浄処理
②異物を十分に取り除き、フレーク状にする
③フレークを高温で溶かし、ペレット状の非結晶レジンにする
④結晶化処理を行ったペレットを高温で溶かす
⑤ボトルの原型品となるプリフォームをつくる
⑥サントリー(HD)で、プリフォームを再びボトルにする

プリフォームは、大人の親指ほどの大きさ
くわしくは、こちらの動画をご覧ください。
「リサイクルペットボトルができるまで」サントリー(HD)動画
「ボトルtoボトル」製造工程でさらなる技術革新
平成30年(2018年)には、協力会社とともに世界初の「F to Pダイレクトリサイクル技術」を開発しました。上記③④の2工程を省くF(フレーク)から P(プリフォーム)をダイレクトにすることで、CO2排出量削減効果は従来の約60%から約70%にアップしました。

「ボトルtoボトル」製造工程の「F to Pダイレクトリサイクル技術」
全国で200を超える自治体で「ボトルtoボトル」を推進
サントリーグループと練馬区が協定を結んだのは、ペットボトルを繰り返し使えるようにする「ボトルtoボトル」に関する取り組みです。区は、回収したペットボトルをリサイクル事業者に引き渡し、リサイクル事業者からサントリーグループが原料のプリフォームを買い取り、再生ペットボトルとして活用する流れです。
「誤解されがちなのですが、これまでのリサイクルの流れが急に変わることはなく、間のスキームは変わりません」と木村さん。
現在、区内の家庭から排出されるペットボトルの70%が「ボトルtoボトル」でリサイクルされ、協定の締結を契機に100%を目指しています。令和6年度(2024年度)上半期(4月〜9月)は、重量で約991トン(小容量ペットボトルで約5千万本相当)です。
サントリーグループと自治体との「ボトルtoボトル」活動は、令和3年(2021年)からスタートし、全国で200を超える自治体に急拡大。地域固有の課題に対し、お互いの強みを掛け合わせることで解決していく「地域共創」の考え方があるからです。
「ボトルtoボトルの活動は、環境政策を推進したい自治体にとって一つの追い風になります。私どもも安定的なPET原料の確保につながり、Win-Winの関係を築けます」
[動画]「ボトルtoボトル」水平リサイクル 練馬区ではいつからやっているの?
分別のポイントは ~はずす、すすぐ、つぶす~
「ボトルtoボトル」活動で、区民である私たち個人が取り組むべきことはペットボトルの分別です。分別方法のポイントを教えてもらいました。
練馬区の場合、分別方法は以下の4ステップです。
①キャップとラベルをはずす
キャップとラベルは、材質が違うのでペットボトル本体からはずします。
(はずしたキャップとラベルは、容器包装プラスチック回収時に出してください)
②すすいで水を切る
飲み残しやたばこの吸い殻などの異物混入があると、リサイクルができません。異物混入のあるペットボトルは、リサイクル工場で人の手によって取り除かなくてはならないため、大きな負担となっています。
③軽くつぶす
運搬の効率を上げるためです。
④青色の回収袋に入れる
ペットボトル回収袋へ入れてください(キャップリングは外さないでOK)。キャップリングはペットボトルよりも軽いので、工場の水の中で浮いて分離し、回収できます。

練馬区のペットボトルの分別方法

練馬区ではペットボトル回収袋を設置


ペットボトルの捨て方がポイントです!
ペットボトルの回収の対象は、飲料(清涼飲料、酒類など)のほか、特定調味料(しょうゆ、ノンオイルドレッシングなど)も入ります。外観だけで分からないときは、「ラベルで確認してください」とのこと。サントリーでは、ペットボトルの識別表示マーク以外に独自の「ボトルは資源!」というロゴマークを全商品に展開しています。

ペットボトルの識別表示マーク

ペットボトルはゴミではなく「資源」であることを訴えるサントリー独自のマーク

ラベルのここに注目!
[動画]「ボトルtoボトル」水平リサイクル ぼくたちにできることは?
外でも分別を!
ペットボトルの分別は、家庭ではきちんと行われている一方で、外では十分にできていないとも言われます。
「自販機の横に設置されているリサイクルボックスにペットボトルを捨てる際も、飲みきって、キャップとラベルをはずしてほしいです。それをどこに捨てるか? 外では、ボトルと一緒にダストボックスに入れてください、という提案をしています」
外での分別をテーマとした、テレビCMもあります。
「商品の売り込みをしない、飲み終える場面から始まるという常識を覆すCMで、自販機の前で“サントリーのじゃなくても、ね”というシーンもあって注目されました」

稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんの3人が出演するTV-CM「#素晴らしい過去になろう。ペットボトルでまた会おう」篇より
イベントや出張授業で「ボトルtoボトル」を啓発
ねり☆エコと練馬区環境部共催の「夏休み!ねりま環境まなびフェスタ」に、令和5年(2023年)から2年連続で参加しているサントリー(HD)。親子を中心に大勢の方にご来場いただきました。「むしろ大人のほうが興味津々でした」と、木村さん。

令和5年(2023年)の「夏休み!ねりま環境まなびフェスタ」では、ブース出展で「ペットボトルポスト」のデモンストレーションを実施

令和6年(2024年)の「夏休み!ねりま環境まなびフェスタ」では、授業形式で「ボトルtoボトル」の取り組みを紹介
啓発の一環として、「ボトルtoボトル」水平リサイクルに関する協定を締結した自治体では、小中学校に出張授業を展開しています。今後は、練馬区でもできるように働きかけたいと考えています。
ほかにも、子どもたちが自然のすばらしさを感じ、水や水を育む森の大切さに気付き、未来に水を引き継ぐために何ができるのかを考える、次世代環境教育プログラム「水育(みずいく)」を平成16年(2004年)から実施し、全世界で累計参加者数は58万人を突破しています(令和7年(2025年)1月末時点)。
日進月歩のリサイクル技術
ペットボトルの「100%サステナブル化」は、目標とする2030年まであと5年。技術は日進月歩だと、木村さんは言います。
「技術的には、植物由来原料で100%のペットボトルを作れるところまできています」
メーカーの努力と同時に、私たちの環境意識や分別行動の意識もレベルアップが必要ですね。
ゴミ問題の解決に!
最後に木村さんからメッセージをいただきました。
「ペットボトルがなくならないのは、コロナ禍を契機に衛生面での再評価や、軽くて持ち運びやすいといった利便性、透明で中身が見える安全性といった有用性が見直されたからです。お客様の支持があるからこそ、ペットボトルをちゃんと資源として循環させていくことが重要であり、この『ボトルtoボトル』水平リサイクルの活動に力を入れています。区民の皆さまには、リサイクルの仕組みをご理解いただき、まずはしっかりと分別をしてもらえたらうれしいです」
[動画]ペットボトルの特長って何?
取材日:令和6年(2024年)12月12日
サントリーホールディングス
(港区芝浦3-1-1)
グループ会社270社、従業員約4万人、連結売上収益(酒税控除後)2兆9521億円、内訳は、酒類が35%、飲料・食品54%(2023年度)
大切にする価値観は「やってみなはれ」「利益三分主義」
ホームページ:https://www.suntory.co.jp/
サントリーグループのサステナビリティ:https://www.suntory.co.jp/company/csr/

[動画]サントリー インタビュー全編「ボトルtoボトル」水平リサイクル