エコまちねりま

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「服のチカラを、社会のチカラに」
あらゆる人の生活をより良くする「LifeWear」

場所

ユニクロ 練馬北口店

お話を伺った人

ユニクロ 練馬北口店

店長代行 北之口崇さん
大嶽優さん

主なエコな取り組み

  • 「RE.UNIQLO回収ボックス」の設置。ダウン商品の「服から服へのリサイクル」
  • ショッピングバッグや商品パッケージなど「脱プラ」へ
  • 出張授業。障害者施設とのコラボによる、店舗で生じるハギレを使った小物づくり

「LifeWear」を掲げる世界3位のアパレル企業

 日本を代表するアパレルブランド「ユニクロ(UNIQLO)」。ブランド創業者の柳井正氏が米国での見聞を基に、「週刊誌を買うようにファッションも気楽に買える店を」と、広島市に1号店を出店した1984年6月が始まりです。

 以来40年、今では国内800店、海外1,670店を有し、売上高が2兆7,665億円(2023年8月期連結決算)。スペインの「ZARA」、スウェーデンの「H&M」に次ぐ世界3位のアパレル企業です。

 ビジネスモデルは、商品の企画から生産、物流、販売まで一貫して行う製造小売業(SPA)。ZARAやH&Mなどの「ファストファッション(最新の流行を取り入れながら低価格の衣料品を販売するブランド業態)」とは異なり、ユニクロは、10年以上前から究極の普段着「LifeWear」という新機軸を打ち出し、「フリース」をはじめ、「ヒートテック」「エアリズム」が定番商品としてよく知られています。

 サステナブル(持続可能)な社会の実現に向けて、ユニクロが全社的に取り組んでいること、そして地域の店舗で取り組んでいることなどを、ユニクロ練馬北口店の店長代行・北之口崇さん、大嶽優さんにお話を伺いました。

取材に対応してくださった北之口さん(右)、大嶽さん(左)

「服のチカラを、社会のチカラに」

 ユニクロには「服のチカラを、社会のチカラに」というサステナビリティに関するステートメント(声明)があり、「服を売るだけでなく、製造工程から販売方法、販売した後の服まで責任を持つ。服の力を社会の力に変えていく」ことを軸として、さまざまな取り組みをされています。

「RE.UNIQLO(リ・ユニクロ)」~全ユニクロ商品のリユース、リサイクルを目指す

 お店に入ったすぐのところに「RE.UNIQLO回収ボックス」があります。ユニクロは不要になった服などを店舗で回収し、難民キャンプや被災地への支援など、服を必要としている世界中の方たちに届けています。当初はフリースが対象でしたが、2006年に対象を全商品に拡大しました。子供服だけでなく、下着や靴下、靴、バッグ、サングラスなどの小物もOK。

 回収点数は2021年度約1,240万点、2022年度約1,670万点。累計の寄贈点数は80の国や地域に5,463万点(2023年8月末)。

 回収した服のうち、汚れや破れなどがあり、服としてリユースできないものは、断熱材や自動車用防音材、固形燃料に活用しています。約22枚分のTシャツが車1台分の防音材にリサイクルされ、自動車のエンジン音や電気自動車の高周波の低減に役立っています。

店舗内に設置された「RE.UNIQLO回収ボックス」。ファーストリテイリンググループのユニクロ、ジーユー、プラステで販売した全商品を対象に回収。ユニクロ練馬北口店では数時間で容量が一杯になり、1日平均2.5ボックスを入れ替えています。

自動車用防音材

固形燃料

ダウンのリサイクルで「服が、服に生まれ変わる時代」へ挑戦

 「RE.UNIQLO」で注目されているのが、ダウンのリサイクルです。東レと共同開発した技術を活用して、回収した商品からダウンとフェザーだけを抽出・洗浄し、新たなダウン商品として蘇(よみがえ)らせます。資源を有効に使い、ごみを減らす仕組みです。ユニクロは「服が、服に生まれ変わる時代」への挑戦の第一歩として、今後も取り組みを加速していくそうです。

 この取り組みを促進するため、不要になったダウン商品を持ち込めば、500円の割引クーポンを付与するという回収キャンペーンを実施。一方、回収したダウンを商品化した「リサイクルダウンジャケット」は、人気が高く、2023年秋冬に発売した商品は完売しました。

 「値段はウルトラライトダウンに比べて、1,000円から1,500円ほど高いのですが、正直なところ、ダウンのリサイクルにはコストがかかり、もっと高くしないと採算はとれません。それでも、ユニクロは「LifeWear」として、お客様の手に届く価格帯と品質を重視していきたいと考えています」

完売した「リサイクルダウンジャケット」

ダウンリサイクルの流れ

リサイクル素材による服づくり

 サステナブルな取り組みは、服の素材選びにも及びます。2030年度までに約50%をリサイクル素材(地球環境への負荷が低い)に切り替えることを目標に掲げています。

 すでに採用しているのが、回収したPETボトルから作られる再生ポリエステル繊維。従来、異物混入やPETボトルの劣化による黄ばみが問題で、特殊な繊維の製造は困難でしたが、東レとの協業による再生技術で、「バージン原料同様に特殊な断面や多様な繊維の製造が可能になった」とのことです。

 こうした再生技術は高機能速乾ウエア「ドライEX」として、ポロシャツなどに展開。リサイクルポリエステル100%の「ファーリーフリース」をフリースのラインアップに加えたほか、世界的に大ヒットしている「ラウンドミニショルダーバッグ」も、リサイクルポリエステルを使っています。また、リサイクルナイロンを使ったバッグなどもあるそうです。

 「このようなユニクロの取り組みを、すべてのお客様にお知らせしきれていないことが課題です。ユニクロ練馬北口店では、店頭に『プライスタグに、ご注目ください』というパネルを設け、リサイクル素材を使っていることや、プライスタグ(値札)を見れば、リサイクル素材かどうか確認できることをPRしています」

販促物でPR

「ファーリーフリース」のプライスタグには「100%リサイクルポリエステル繊維を使用」と表示

使い捨てプラスチックを減らすために

 世界中で深刻な環境問題を引き起こしている海洋プラスチックごみ問題。プラスチックごみは毎年800万トンが海に流出し、2050年には魚よりもプラスチックごみが上回ると言われています。ユニクロはこの問題に向き合い、使い捨てプラスチックをできるだけ使わない取り組みを進めています。

 「ショッピングバッグは、国内ユニクロ、ジーユーで2019年にプラスチック製を廃止し、再生紙など環境に配慮した紙製に変更。さらに2020年9月に有料化しました。一方、オリジナルのリユーザブルバッグを販売し、マイバッグの持参を呼びかけています」

レジ前で販売されている、紙製ショッピングバッグとリユーザブルバッグ

 

 商品パッケージについても、プラスチックの撤廃および環境に配慮した素材に順次切り替えています。こうした取り組みにより、グループ全体のショッピングバッグと商品パッケージで、2018年実績から85%に当たる年間約7,800トン相当のプラスチックを減らすことができたそうです(2020年末時点)。

 「最近は、マイバッグを持参する方やユニクロのリユーザブルバッグを買われる方が非常に増え、家庭でのごみが減って良いという評価の声もいただいています。商品パッケージの切り替え当初は、衛生面でお客様からネガティブな反応もありました。これに対し、なぜ切り替えたのか、環境にどう良いのかを販促物などを通じて丁寧に伝えることで、数か月でご理解いただけるようになりました」

紙製ヘッダータイプに切り替えたエアリズムのインナー

 令和5年(2023年)7月にねり☆エコ主催で開催した「ねりま環境まなびフェスタ」に出展したユニクロは、子どもたちにリユーザブルバッグを作ってもらう体験講座を開き、大人気でした。

 「子どもだけでなく保護者の方からも、海洋ごみの問題を知らなかった、自分たちにできるプラスチック削減の取り組みがあることを知って勉強になったなど、多くの声をいただきました」

「ねりま環境まなびフェスタ」に出展した時の様子
参考:「ねりま環境まなびフェスタ「展示ブースレポート」

地域の小中学校への出張授業

 ここからは、地域と連携した取り組みを紹介します。

 「国内800店、お客様とのタッチポイント(接点)がたくさんある企業だからこそ、地域に根ざした取り組みも大切にしています」

 1つは、出張授業。その名も「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」。社員による出張授業後、子どもたちが主体となって、子ども服の回収活動をする体験型のプログラムです。

 「もしも自分が難民だったらどういう気持ちか、必要なものは何か、子どもたちにディスカッションしてもらい、服の回収の話につなげていきます。服の回収活動を通じて自分たちでできることを知ってもらう、良い機会にしてもらいたいと考えています」

 地域の小中学校に年間7校ほど出張授業を行い、回収した服がどう役立ったのかなど、レポートにまとめて学校に届けています。全国のユニクロで2013年度から累積で4,315校、のべ47万人の子どもたちが出張授業に参加しました。先生方へのアンケートや社会情勢に合わせて授業内容をアップデートしていることも、高評価につながっているそうです。

ズボンの裾上げで生じるハギレを利用した障害者施設での小物づくり

 区内障害者施設とのコラボレーションもあります。「ズボンの裾上げなどで生じるハギレは、清掃用に使ったりしていますが、使いきれないくらい膨大な量が出る」そう。そこで、練馬区障害者就労支援センター「レインボーワーク」を通じて、区内の障害者施設にノベルティ用の小物づくりを依頼。「ミニバック」を作ってもらい、昨年8月、ユニクロ練馬北口店など区内3店舗で無料配布しました。

 「100個以上用意しましたが、すぐになくなりました。お客様にも、障害者施設の方にも喜んでいただけたので、今年の夏にもまた予定しています」

ハギレからミニバックに
練馬区のプレスリリース

地元の方たちをモデルに

 地元の方たちをモデルにしたポスター「この街と、いっしょに」をご存じですか。練馬北口店では、都内唯一の味噌蔵「糀屋三郎右衛門」の社長、大泉学園の村田農園、五十嵐農園、小川農園、練馬四季畑の農家の皆さんに、「私のお気に入りアイテム」を紹介していただいています。

 「地域で活躍されている方と一緒に仕事をしていきたい、という思いがきっかけで、6年前にスタートしました。練馬北口店にはヤングファミリー層が多く来店するので、練馬の魅力の再発見につながっているようです」

「この街と、いっしょに」のポスター

 味噌蔵の8代目、糀屋三郎右衛門社長の辻田宥樹さんは「『ポスターに載っていますね!』と声をかけられるようになりました。この仕事を知ってもらうためにも、ユニクロさんとのご縁を大切にしていきたい」と話しています。エコな取り組みについて聞くと、「化学調味料を使わない、昔からの天然醸造がエコそのもの。木の桶も手入れをしながら長年使っています」と教えてくれました。

 大泉学園の村田農園、五十嵐農園、小川農園、練馬四季畑の農家の皆さんは、「ユニクロさんに来店される広い年齢層の地域のお客様に、大泉学園の農業について知っていただく機会となり、東京や地域の野菜の地産地消促進にも繋がる取り組みで、大変うれしく思っています」と話してくれました。

糀屋三郎右衛門社長の辻田宥樹さんは「味噌蔵は空調を使わず自然環境そのまま。ユニクロ製品は機能的で動きやすく、仕事中も愛用している」とのこと

環境への取り組みを地域の皆さんとご一緒に

 最後にメッセージをいただきました。

 「ぜひ着なくなった服をお持ちください。きっかけは、大掃除でも何でもいいので、それが難民の助けにも、環境への配慮にもつながります」

 「環境への取り組みは、私たちがどれだけ伝えても、お客様の共感や協力なしには何も進みません。この点で、練馬は地域全体の熱量が非常に高い。今後とも環境への取り組みを地域の皆さんと一緒に頑張っていきたいと思っています」

取材日:2024年2月15日

ユニクロ 練馬北口店
(練馬区練馬1-17-1 Coconeri2階)

練馬区内では、リヴィン光が丘店、リヴィンオズ大泉店に次ぐ3店舗目として平成26年(2014年)4月にオープン。営業時間は10時-21時。出張授業のほか、中学生の職場体験の受け入れ、障害者・難民の雇用なども行っている。スタッフの難民の女性の方は「日本のおもてなしを学んでお客様の対応をしています。スタッフの方はみな親切です」と流暢な日本語で話してくれました。

ホームページ:https://www.uniqlo.com/

ねり☆エコ エコマップ

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