省エネライフ2013 当日レポート

講演会レポート

 当日の2月6日は、「大雪」と報じられた一日。予報ははずれたものの、小雨のぱらつく寒さが続きました。にも関わらず、会場にはご年配の方から、親御さんに連れられた小学生まで約50名の参加者が集まりました。

 主催者を代表して、横倉会長から「『蛍の光窓の雪』ではありませんが、天気が悪い日は、逆に勉強するいい機会です。今回は省エネの世界の第一人者という中上先生に講演をお願いしました。お話を参考に、日常生活に役立ててください」と、来場者に挨拶をしました。

 講師プロフィール紹介ののち、講演がスタート。資料にないスライドも交えた充実した内容に、熱心に聞き入る参加者のまなざしが印象的でした。すべては紹介しきれませんが、ポイントをピックアップしてお届けします。

横倉 尚会長
練馬区地球温暖化対策地域協議会
武蔵大学経済学部教授


講演会「ここまで進んだ!暮らしとエネルギーの関係」

講師/中上 英俊氏((株)住環境計画研究所 代表取締役所長)

データが語る省エネのポイント

「節電には人の意識が強く作用しています。震災以前から節電を『強く意識していた世帯』では、その他の世帯よりも2倍節電が進んでいるという結果が出ました」

「家庭部門の単独用途では、給湯が最大です。冷暖房ばかり注目されがちですが、そのシェアは合計でも1/4弱。本当は、給湯から省エネを考えるべきなのです」

「テレビは、省エネ製品に買い替えても、型を大きくすると、電力消費量は変わらない場合があります。大型化も問題にすべきですね」

「インバータエアコンは、効率よく設定した温度に変えるようにできており、わざわざ温度を上げ下げする必要はありません。また、広い部屋には大型を一つ置くより、小型を二つ入れたほうが効率がいいこともあります」

「太陽エネルギーの投資回収率は、高い順に太陽熱温水器、ソーラーシステム、太陽光発電。私がオススメするのはソーラーシステムで、東京都も力を入れています。ご存知ない方が多いので、ぜひ宣伝ください。太陽光発電は、売電の補助が出るので外資系などの投資が盛んになっていますが、補助金なしでは、回収率は一番悪いんです」

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中上 英俊氏
(株)住環境計画研究所
代表取締役所長


国際比較と日本の今

「欧米の暖房用エネルギー消費は、実は日本の4倍! ただし、家電製品のエネルギー消費では、日本はドイツ・フランスの1.5倍で、しかも増加基調にあります」

「ドイツ、フランスは給湯の割合が小さいのですが、全部屋暖房なので、シャワーで済ませられるのです。日本ではお風呂場は暖房されていないので、難しいですね。エネルギー消費の問題は、どんな生活をしているかが重要なのです」

「一番高い基準に合わせていく、トップランナー制度。日本の基準は世界で一番厳しく、欧米も真似したいと言っているほどです。現在、建築材料でもその制度を採り入れようという動きがあります」

「太陽熱温水器が一番普及しているのは、中国。インフラ整備が不十分なので、お湯を沸かすエネルギーと器具がないから。アメリカ、オーストラリアでは、プール用に普及しています」

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省エネ最新事情

「建物のエネルギー消費量をほぼゼロにすることを、ZEB(NET Zero Energy Building)と言います。EUでは、再生可能エネルギーの活用で、これを目指しており、日本は後れをとっています」

「日本と違い、アメリカでは、今何で電力を使っているかまで、すべて公開しています。グーグルマップとデザイン連動し、近隣世帯のエネルギー消費状態が一覧できるシステムも検討中です」

「スマートメーター(通信・管理機能を持つ高機能型電力メーター)の普及が、欧米では拡大するとみられています。ちなみにスマートハウスは、欧米ではスマートホームといいます」

 むすびに、60年前と現在の暮らしを比較して、「本当の豊かさとは何か」を問いかけた中上氏。私たちは、大量のエネルギーを消費して便利になったぶん、幸せになったのか? 作り手は、使い手の実情をどこまでおさえているのか? 至れり尽くせりの設計に、無駄は生じていないか…? 自分の生活、人生を、もう一度考え直したくなるお話に、場内からは大きな拍手が送られました。

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