エコまちねりま

007

生ごみを堆肥化して
区内での循環を推進!

場所

ねりま・ごみフォーラム

  • 定例会活動場所:石神井公園区民交流センター
    (練馬区石神井町2-14-1)
  • 生ごみ回収場所:練馬区全域 約20世帯
  • 生ごみ受け入れ先:井口農園(練馬区立野町)

お話を伺った人

ねりま・ごみフォーラム

 副代表 兼 会計 関口一成さん
 副代表 山本猛さん
 会員 松岡直子さん、正野信さん
    生ごみを出している会員さん達

井口農園 園主 井口良男さん

主なエコな取り組み

  • 家庭の生ごみを回収し、区内農家で堆肥化してもらう生ごみリサイクル
  • 家庭でできる生ごみ堆肥化の出前講座
  • イベントでのフードマイレージゲームによる地産地消・CO2(二酸化炭素)排出量削減の啓発活動

「減らせごみ!開け未来!」のスローガンを掲げ、2004年から活動

 

「ねりま・ごみフォーラム」は平成16年(2004年)10月設立。区の公募で集まった練馬区民環境行動方針検討会議のごみ減量に関する分科会のメンバーによって結成されました。

スローガンは「減らせごみ!開け未来!」。ごみを減らし、資源として循環する活動を広めて、安心・安全な練馬の環境を次世代に手渡すことが当初からの目標です。

 「ごみ減量には様々な方法があります。食べ残しをしない、無駄なものを買わない、使い回すなど。家庭から毎日出てくる生ごみも燃やさず活用すれば、畑の堆肥になる大切な資源です」と関口さん。

 現在の会員は30名ほど。月2回(第2・4土曜日)の生ごみ回収および集団回収(新聞・雑誌・段ボール・古布・金属など)、月2回(第2・4水曜日)の定例会、イベントや講座での啓発活動など、約20年間、途切れることなく環境活動を続けています。

現在の中心メンバーである関口さん(右)、山本さん(左)、松岡さん(中央)。活動20年目の今も、月2回の定例会を実施

ボカシでひと手間かけた生ごみは、思ったほど匂いがない

 練馬区内全域、約20世帯の生ごみをリサイクル業者の協力を得て回収し、井口農園(練馬区立野町)の堆肥場へ運ぶ現場を取材させていただきました。

 生ごみ回収は朝7時スタート! 2人ペアのボランティア(運転と回収=正野さん 助手=松岡さん)での回収作業で区内全域の会員宅を回り、午前中には井口農園へ到着します。光が丘団地での生ごみ回収の様子です。

 生ごみは会が貸与する専用の水切りバケツに2週間分を貯めて出します。中身を回収用の45リットルバケツに移して回収しますが、思ったほど匂いがないことにビックリ! 水切りをしっかり行い、米ぬか、モミガラ、醗酵促進材(EM)を混ぜて作る「ボカシ」を混ぜ込むので、腐敗することなく醗酵状態を保ち、普通の「生ごみ」とは全く違うのだそうです。ボカシは米ぬかを使っているため、ぬか床のような匂いがします。

 とは言え、2週間生ごみを貯めておくのは大変なのでは? 3名の会員さんに伺ったところ、「しっかり水分を取ること。それから、野菜くずなどの生ごみはなるべく薄めに切った方が、微生物が分解しやすいんですよ」「あまり気負わずにやるのが長続きのコツかも。段々ボカシの匂いも好きになってきますよ(笑)」とのことでした。

 生ごみの管理をすることで、自然と食材を使い切る、ごみを減らす意識も高くなってきたそうです。
 一番長く活動されている会員さんは90歳。「私たちの身体は食べたもので作られていますので、なるべくなら微生物一杯の元気な土に育った元気な野菜を食べて元気に暮らしたいと思っています。ごみの排出を減らし、上手に循環させればCO2排出量削減にもつながって、未来の子ども達に恥ずかしくない活動だと思うのです」と、話してくれました。皆さん楽しんで活動され、コミュニケーションの場にもなっている様子が印象的でした。

 一緒に回収している古紙・空き缶などの資源ごみは、会員さんがご近所に声を掛け、6世帯が回収に協力してくれています。区から報奨金が支払われる資源ごみの集団回収は、会の大事な財源になっているそうです。

回収用のトラックで作業中の正野さんと松岡さん。会員同士の和気あいあいとした雰囲気が漂います。

生ごみ用のバケツは二重になっています。内側のバケツ(右)の底はザルになっていて水切りができます。

ボカシは定例会などで会員が手作りしたものを配付しています。米ぬか、もみ殻、黒蜜、EMを混ぜて作ります。

約4時間で回収完了! 回収業者さんの思い

 トラックは予定通り午前中に井口農園に到着。この日は18世帯、57.6キロの生ごみを回収しました。約2ヘクタールの農園内にある堆肥場に生ごみを下ろして完了です。

堆肥の山に回収した生ごみを積む正野さんと松岡さん

 会員の正野さんは回収業者でもあります。月2回の生ごみ回収による収入はほぼ実費のみ。会員の皆さんは「正野さんのご協力あってこそ!」と口を揃えます。正野さんに活動へ参加する理由を伺うと、「食べ物が循環して作られていることを子どもたちに伝えていきたい」とのこと。信念を持って取り組まれていることが分かります。

会員で回収業者の正野さん。明るいお人柄は回収場所でもムードメーカーです。

1年以上かけて堆肥化。堆肥の役割とは?

 ねりま・ごみフォーラムの生ごみは、井口農園の堆肥のごく一部。動物園からの動物のフンなども引き取っており、堆肥の山になっています。落ち葉と混ぜて、何度か機械で切り返しながら1年以上かけて堆肥が出来上がります。

 園主の井口良男さんに堆肥の役割についてお伺いすると、「堆肥を入れると土に空気が入り、そこに根が張りやすくなる。肥料の栄養分を堆肥が一時蓄積し、張ってきた根がそこから養分を吸います。肥料が適切に効くように緩衝材の役割をします」と教えてくれました。 ほかにも、同じ場所で同じ作物を栽培する「連作」による障害を防ぐ役割もあるのだとか。同じものを作ると土の中に残る肥料成分に偏りが出てきますが、堆肥を撒くことでリセットできるのだそう。井口農園では3年に1回ほど、土の質を保つために堆肥を撒いています。

井口農園 園主の井口良男さん

千川上水沿いにある広大な井口農園

 広い農園には大量の堆肥が必要です。大きな堆肥の山を見ると、大変な作業であることが想像できます。ねりま・ごみフォーラムでは井口農園の野菜を買い取ってイベントで販売することもあります。丹精込めて作られた野菜の味は会員の皆さんのお墨付きです。

 「皆さんが努力されているのが分かるので、うちもほんの一部ですが協力しています」と井口さん。受け入れ先の井口農園、回収業者の正野さん、会員の皆さんの思いと行動力が響き合って、区内の生ごみ循環が達成されていることがよく分かりました。

家庭で生ごみを堆肥に! 出前講座も行っています

 平成16年(2004年)から、豊玉リサイクルセンターで体験型の生ごみ堆肥作り講座を実施しています。講師を務める関口さんは、「家庭からできるエコ活動という、まさに私たちが目指すもの」と話します。

 講座では、庭のない集合住宅住まいの方にも適応できるように、プランターの土再生を目的に、牛乳パックを利用した堆肥作りを紹介しています。松岡さんは、「参加希望者の多さや、参加者の熱心さから関心の高さを感じます。会員の中にも団地のベランダで化成肥料や農薬は全く使わず自家製の生ごみ堆肥を使って野菜や花を上手に育てている方もいます。この生ごみ循環活動がもっと広がるようにこれからも啓発活動を頑張って続けて行きたい」と、やりがいに感じているそう。最近は体験の合間に、堆肥作りに欠かせないボカシ作りのデモンストレーションも行っています。



講座の様子

フードマイレージゲームを考案! 子どもたちに地産地消を伝える

 フードマイレージとは、生産地から食卓まで食材を運ぶためにかかった「重さ×距離」で表される指標。CO2排出量を減らすには、フードマイレージの少ない食材を選ぶ意識を持つことが大切です。その啓発として、ねりま・ごみフォーラムが考案したのが「フードマイレージゲーム」。ゲーム形式で子どもでも楽しめるため、「ねりま環境まなびフェスタ」などの子ども向けイベントの場を中心に実施しています。

 ゲーム用紙にはカレー、餃子、おでん、フルーツデザートなどの材料が書かれ、釣竿を使って必要な食材カードを釣り上げます。食材カードの裏には産地が書かれており、フードマイレージの合計を出します。練馬産の食材は輸送距離を「0」に設定しているので、フードマイレージも「0」! 中には、合計値が少なくなるように何度もチャレンジする子もいるほど、楽しんでゲームをする様子が見られます。

 「見た目は釣りゲームなので『やってみたい!』と興味を持ってくれる子どもたちが多いです。ゲームを楽しむ中で、自然と『地産地消』の考え方を覚える仕組みになっています。今はスーパーなどでも産地表示があるので、目が向くきっかけになればと思っています」と、皆さん手応えを感じているそうです。

2023年7月に開催した「ねりま環境まなびフェスタ」での様子

フードマイレージゲームのゲーム用紙

農地面積23区最大、都市農業の盛んな練馬だからこそ…

 お話を伺う中で皆さんに共通していた考え方は、「循環させたい」ということ。都市農業が盛んで身近に農地のある練馬だからこそ、なおさらその思いは強いそうです。

 「埋め立て地問題、CO2排出による地球温暖化など、ごみが増えることや燃やして処理をすることで生じる数々の問題があります。ごみを燃やさず土に返す『循環型都市』を目指して、頑張って活動を続けています。将来的に、行政も交えた生ごみの回収システムの確立ができたらと思います。生ごみも大切な資源として、皆さんが当たり前に出せるようになっていけば」と期待を込めます。

20年来、共に活動してきた皆さん。チームワークの良さが伺えます。

次世代によい環境を残すために…身近なエコ活動を!

 最後に、メッセージをいただきました。

「家庭でできるエコ活動はたくさんあります。その中で私たちは『ごみ減量』という視点で取り組んでいます。次の世代の子どもたちによりよい環境を引き継ぐために、ぜひ皆さんにも気づきを持って身近なエコ活動から実践してもらえればと思っています」

取材日:2023年10月11日・28日

ねりま・ごみフォーラム

練馬区民環境行動方針検討会議(※)のごみ減量に関する分科会のメンバーにより、平成16年(2004年)10月結成。平成18年(2006年)10月から生ごみ回収をスタート。令和5年(2023年)現在、毎月第2・4土曜に約20世帯の生ごみを回収し井口農園に堆肥の材料として提供している(2022年の生ごみ回収総量:1549.7キロ)。
消費生活展・JA農業祭・練馬まつり・ねりま環境まなびフェスタなどの区内イベントでごみ減量の啓発活動、豊玉リサイクルセンターで生ごみ堆肥化の出前講座を実施。練馬区民環境行動連絡会への参画や他団体との交流など、区内の環境活動にも積極的に携わっている。

(※)平成14年(2002年)から2年間、地域環境、地球環境の保全を検討するため94名の区民が参集。自分たちで取組み案(プロジェクト)を提案し、「練馬区民環境行動方針」をまとめた。

ホームページ:https://nerimachi.jp/hiroba/group/nerimagomi.php

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