エコまちねりま

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脱炭素の水素社会が見える
水素ステーション

場所

練馬水素ステーション(練馬区谷原1-1-34)

お話を伺った人

東京ガス株式会社 水素ソリューショングループ
水素ステーション技術チーム チームリーダー

本多一賀さん

練馬水素ステーション担当

蔵品稔さん

主なエコな取り組み

  • CO2(二酸化炭素)削減に向けた水素の活用
  • 都市ガスの脱炭素化を研究中
  • 練馬水素ステーションにPRルームを設置
    (*コロナ禍のため見学は当面休止)

水素社会の未来

 目白通り沿いを谷原交差点に向かって進むと、目にとまるのが大きな球状のガスタンク(ガスホルダー)。その隣に国内で3番目、天然ガススタンド併設では国内初として、2014年(平成26年)12月に開業した練馬水素ステーションがあります。ガソリン車がガソリンスタンドで燃料を補給するように、燃料電池自動車に燃料となる水素を補給する場所が水素ステーションです。国が推進する「水素社会」の未来がここにあります。

入口にある看板

水素はCO2を出さない

 水素がどうしてエコなのか?というところから、練馬水素ステーションを運営する東京ガス 水素ソリューショングループ 水素ステーション技術チームリーダーの本多一賀さんにお話を伺いました。

「普通のガソリン車は走行時に排気ガスが出ますが、水素を車の燃料として使う場合、走行時には水しか出ず、環境に優しいのです」

本多一賀さん

 水素を使って走る燃料電池自動車は、地球温暖化の原因となるCO2の走行中の排出がゼロという特徴があります。その仕組みは、ガソリンの代わりに水素を積み、水素と酸素を利用して燃料電池で電気を生み出し、それを使ってモーターを回して走ります。電気でモーターを回して走るという点では、電気自動車の一種ですが、外部充電が必要な電気自動車に対し、燃料電池自動車は車の中で発電しながら走ります。

トヨタ自動車の新型『MIRAI』
練馬区の公用車

いろいろなものから作ることができる水素

「水素はさまざまな物質に含まれていて、いろいろなものから作ることができます。水を電気分解して作る方法以外にも、天然ガスなどからも作れますし、化学原料の副産物として作れる水素もあります。当社は都市ガスから水素を作り、電気と熱を作る家庭用燃料電池『エネファーム』を販売しています。水素で発電する燃料電池が増えると、環境にやさしい発電機が世の中に広がることになります」

さらに一歩先へ

 東京ガスは、都市ガスから水素を作ることに加え、CO2を発生しないグリーン電力で作った水素と都市ガスの燃焼などで発生したCO2から天然ガスの主成分であるメタンを合成する「メタネーション」という技術を研究中で、「これができれば、CO2のリサイクルができ、既存のガス機器を使ったまま、脱炭素化を進めることができます」と本多さん。都市ガスの脱炭素化には水素が大きな役割を果たすことになりそうですね。

※くわしくは東京ガスグループの2050年脱炭素社会への挑戦をご覧ください。

練馬水素ステーションはオフサイト方式

 練馬水素ステーションの概要については、練馬水素ステーション担当の蔵品稔さんにお話を伺いました。

 水素ステーションには、水素製造装置を設置して都市ガスから水素を製造する「オンサイト方式」と、外部から水素を陸上輸送で調達する「オフサイト方式」があります。練馬は、浦和水素ステーションで製造した水素を持ってくるオフサイト方式。稼働率が低いうちは、1つの水素製造装置を共有して、設備投資の抑制と稼働率向上による運用コストを低減しています。

練馬水素ステーションは、浦和水素ステーションからカードル(圧縮水素容器)で運んできた水素を利用するオフサイト方式 〈資料提供:東京ガス〉

カードル(圧縮水素容器)。この1基でFCV約6台分が充填できる。 〈写真提供:東京ガス〉

水素の種類は?

 練馬水素ステーションで供給する水素は、生産過程で生じるCO2を大気中に放出する「グレー水素」と呼ぶもので、現状は水素の大部分がグレー水素だそうです。将来的には、再生可能エネルギーを用いた水の電気分解によって、CO2を排出せずに作られる「グリーン水素」を目指しています。豊洲水素ステーションでは「*カーボンニュートラル都市ガス」から製造した水素を供給し、オンサイト方式でありながらCO2の排出を実質ゼロにする取り組みを行っています。

*カーボンニュートラル都市ガスとは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、CO2クレジットで相殺し、燃焼しても地球規模ではCO2が発生しないとみなす液化天然ガスを活用したもの。

水素充填時間は約3分

 水素を燃料電池自動車に充填するまでの流れは、ガソリンスタンドと全く変わりません。

 「充填時間は約3分。ガソリン車の給油時間と同等に設計されています」

 燃料電池自動車は普及に向け、ガソリン車と同等の使い勝手になるよう設計されています。水素の販売価格は事業所ごとに異なりますが、練馬水素ステーションは1,210円/㎏(税込)2022年(令和4年)2月時点、満タンは6,000円程度で、約700㎞とガソリン車並の走行距離が可能です。

水素を充填できるディスペンサーは1か所。オレンジ色で水素と書かれた所に燃料電池自動車を止める。

水素充填時に、燃料電池自動車の水素タンクの温度上昇をあらかじめ抑制するため、ディスペンサー内の熱交換器でマイナス33度〜40度まで冷やす「プレクール」という工程を経て、ノズルで充填。

水素メーターの単位はkg。一番下には充填中の温度が表示される。

[動画]燃料電池自動車への水素充填方法

普及の壁は…

 練馬水素ステーションの利用状況は1日5台ほど。燃料電池自動車は普及が始まったばかりで、台数(約7,000台)も水素ステーションの整備(約160か所)も限定的。車種が少ないこと、車両価格が高いことなども普及の壁となっています。

*燃料電池自動車の導入促進制度として、車両購入に関する補助金があります。くわしくはこちらをご覧ください。

 取材当日は利用者が多く、1時間余りに3台の利用がありました。お話を聞くことができたドライバーは練馬区民。環境関連のビジネスをしているため社有車としてトヨタ自動車の新型『MIRAI』を購入したそうです。「乗り心地はいいです。SUVなど、車種の選択肢がもっとほしいですね」と話していました。実際、試乗してみると、とても静かでスムースな走りを体感できました。

 今後の市場動向について、東京ガスの本多さんは「現時点で購入する際には、電気自動車を選ぶような傾向がありますね。充電時間が長くても自宅で充電できるという利便性があるからです。ただ、トラックやバスといった商用車となると、充電時間が長いのは困りもの。商用車は、燃料電池自動車が有望視されています」と話しています。

水素ステーションの新しい活用

 東京オリンピック開催後の選手村地区では、水素ステーションで製造した水素を導管で選手村地区に配置した燃料電池まで運び、発電した電力を選手村地区のマンション共用部や商業施設へ供給するという街一体の取り組みも始動します。水素ステーションの新しい活用方法として、東京ガスの取り組みではありませんが、水素で発電した電力を併設のコンビニ店舗に供給する事例も出てきました。政府の水素ステーションの整備目標は2030年(令和12年)に1,000基。今後の動向に目が離せませんね。

敷地内に併設された練馬水素ステーションPRルーム。動画やパネルで水素ステーションについて学習できます。※現在、コロナ禍のため見学は休止しています。

取材日:2022年2月21日

練馬水素ステーション
(練馬区谷原1-1-34)

東京ガス株式会社が運営する水素ステーションは、都内に3か所(練馬・千住・豊洲)、埼玉県に1か所(浦和)あります。練馬水素ステーションは、国内初の天然ガススタンド併設の商用水素ステーションとして、天然ガススタンドの設備の一部を共用することにより、コストダウンと合理的な運用を実現しました。
ホームページ:https://eee.tokyo-gas.co.jp/product/hydrogen/station/index.html

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