省エネライフ2012 当日レポート

講演会「住宅の省エネ」レポート

 「家のエネルギーをいかに効率化するかは、世界的な課題。ぜひこの機会に、専門家や企業の話をお役立ていただけたらと思います」という、主催者・横倉 尚さん(練馬区地球温暖化対策地域協議会会長・武蔵大学経済学部教授)の挨拶から始まった講演会。当日は、「温暖化とは思えない寒さですが…」という言葉どおりの寒さでしたが、会場は当初の定員を上回る参加者となり熱気を帯びていました。

・住宅の省エネ―現状と課題―(講師/山田 清さん)
・窓から始めるエコライフ(講師/富山 真司さん)
・復興支援住宅エコポイント&省エネ改修税制(講師/堤 千春さん)
・質疑応答と参加者の感想

横倉 尚さん


住宅の省エネ―現状と課題―

講師/山田 清氏(一級建築士)

 最初の講師は、「杉並・地域エネルギー協議会」などに参加している山田清さん。一級建築士の立場から、エネルギーの見直しや、エネルギーを切り口にしたまちづくりを提案しています。今回は、住宅の省エネについて、全体的な問題をお話しいただきました。

 まず、住宅の緊急課題として、ごみ量を削減する「長寿命化」を挙げた山田さん。そのうえで、住宅における省エネの基本は、「遮熱・断熱・創エネ」の熱対策だと言います。断熱では、単に断熱性能を高めるのではなく、床・壁・天井の表面温度をコントロールするのが効果的とのこと。「創エネ」では、「中央線の特別快速が通過する風で風力発電できないか」など、斬新なアイディアも飛び出し、会場の驚きを誘いました。

 その他、電気・ガス・水道使用量を記録する、簾やカーテンでの窓対策、ホットカーペットの下に断熱シートを敷くなど、具体的な方法も紹介され、非常に参考になるお話でした。

 リフォームでは、「これをやれば正解」という答えがない、という山田さん。各家庭の生活スタイルに合わせ、どう答えを導き出していくかが課題…というお話も、印象的でした。

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山田 清さん


窓から始めるエコライフ

講師/富山 真司氏(日本板硝子ビルディングプロダクツ(株))

 家庭でのエネルギー対策で、今見直されているのが、窓。そこで、世界的ガラスメーカー・日本板硝子ビルディングプロダクツ(株)の富山真司さんが次の講師を務めました。

「一般的な戸建て住宅で、窓の占める割合は、住宅の表面積の4〜5%。しかし、冬は5割、夏は7割ものエネルギーが、窓を通して出入りします」。冒頭から、衝撃的な事実を伝える富山さん。窓をエコにすれば、寒さ暑さに耐える「ガマンライフ」でも、冷暖房を好きなだけ使う「ゼイタクライフ」でもない、「快適ライフ」が送れると主張します。

 そこで注目されるのが、窓の改修です。その方法には、(1)内窓新設、(2)外窓交換、(3)ガラス交換の3種類で、それぞれにメリット・デメリットがあります。そのうちガラス交換を説明。ガラスにも性能差があり、その違いを真空ガラスの体感デモ機で説明いただきました。ガラスの交換だけでエコ化が可能と感心しました。

 また、単純に高機能な窓に換えることが全てではなく、自然のエネルギーを効率よく使うことも大事であるということを、季節ごとに例を挙げてまとめてくれました。さらに、サッシが古ければ効果が半減する、遮熱フィルムを貼ると冬の陽だまりもなくなるなど、間違った改修方法も説明されました。

 換気や緑のカーテンなど、人の手でできることを実践しつつ、窓改修でさらにエコに…その流れがよくわかる講演でした。

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富山 真司さん


復興支援住宅エコポイント&省エネ改修税制

講師/堤 千春氏(エコ窓普及促進会)

 窓のリフォームは、現在政府が行っている「復興支援住宅エコポイント」の対象となります。その詳細について、エコ窓普及促進会の堤千春さんが解説してくれました。

 まず、ポイントの対象期間は、平成23年11月21日〜平成24年10月31日に工事着手したもの。申請期限は、戸建てか共同住宅かなどで異なりますが、予算が消化された時点で発行終了となるため、早めの工事がオススメです。

 どんなリフォームがポイント対象となるかというと、窓の場合は、(1)内窓新設、(2)外窓交換、(3)ガラス交換の3パターン。窓以外にも、外壁・屋根・天井や床断熱材の施工、バリアフリー・耐震改修などがあり、合計上限30万ポイントが認められます。その発行数は、窓の面積によって異なります。

 ポイントの申請方法、「エコ窓減税」(所得税や固定資産税の減税)の概要など、難解な制度も紹介。参考例を挙げての、わかりやすい説明でした。

 発行されたポイントは被災地の商品やエコ商品等と交換できます。(ポイントの半分以上は、被災地の商品や義援金等に充てることが義務付けられています)

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堤 千春さん


質疑応答と参加者の感想

 講演後、約10分ほど、質疑応答の時間がありました。

Q:雨戸の効果は?
A:データはありませんが、理屈でいうと窓にあたる風が減るので、熱の逃げる率は下がります。ただし雨戸のタイプによります。

Q:窓を改修すると結露は出ない?
A:部屋の湿度が100%なら、どんな窓でも、壁にも結露は出ます。そのうえで、有効なのは複層ガラス。どのメーカーも、類似品なら性能はほぼ一緒です。

 また、講演終了後、参加者に感想を伺ったところ…「住宅の改修を考えていて、情報収集の一環で参加しました。これをもとに、深く検討してみます」「具体的な例とわかりやすい説明があり、非常に参考になりました。山田さんの生活全体の考え方や、富山さんの『ガマンしない省エネ』という提案に、感銘を受けました」といった反応があり、有意義な講演だったことを実感させてくれました。

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